300ページに及ぶ先生方の熱い意見が詰まった冊子が完成
9月に入ると、担当者から評価分析の結果が返ってきた。その内容はどれも詳しく、一問一問、設問の仕方や解答にかかるまでの時間と制限時間の関係、解答用紙の大きさに至るまで、事細かに分析されていた。静岡県立清水東高校の西野耕二先生はこう振り返る。
「レポートからは、生徒のために大学入試が良くなってほしいと願っている先生方の熱意が伝わってきました」
「集まったレポートは、どれも入試問題への意見や批判など様々な本音に溢れていました。正直に言って、私たちの予想を大きく越える、充実した内容でした」(鈴木孝雄先生)
入試問題評価分析および冊子作成という、教師の自発的な取り組みは、静岡県高等学校長協会(以下、校長協会)の理解を得て、一層大きく展開することとなった。校長協会で進学指導を担当する静岡県立磐田南高校の油井完爾校長は、これは校長協会として支援するべきだと考えた。
「入試問題を高校の視点から分析するというのは画期的な取り組みです。静岡県の教育をより良くしていこうという先生方の熱意を積極的に活かすべきだと考えました」(油井校長)
早速、油井校長は、9月に行われた校長協会と大学関係者の会合の席で、できたばかりの冊子のパイロット版を見せ、入試問題評価分析の趣旨を説明した。
「大学側も高校側との連携の必要性を強く感じているようでした。冊子に大きな関心を寄せていただきました」(油井校長)
評価分析の冊子作成は急ピッチで進められ、10月の半ば、300ページにも及ぶ冊子が完成した。冊子は各科目とも総評と設問ごとの評価で構成されており、1科目で14ページに及ぶ科目もあった。400部刷った冊子は静岡県内外の高校、大学、教育関連団体などに送付された。評価分析の結果を公表したということで、この取り組みには一段落つけた。だが、やがて、静岡大から校長協会を通して、入試問題評価分析について、高校の先生方と大学の入試関係者とで話し合う機会が持てないか、という打診を受けたのだ。
希望者に冊子を無料で送付します。磐田南高校の鈴木孝雄先生に直接、ご連絡ください。(連絡先/磐田南高校 TEL.0538-32-7286)
評価分析担当者と入試関係者が集う報告会が実現
「大学側は、高校側が入試問題に対してどんな批判をするのかと不安に思っていたのでしょう。しかし、私たち高校の教師が望んでいるのは、大学との対話です。一方通行の押し付けではなく、もっと生徒のことを考えて入試問題を作成してほしいという私たちの思いを、冊子を通じて理解していただけたのではないでしょうか」(鈴木智之先生)
その後、静岡県立大、浜松医科大からも「入試関係者と高校側とで話し合う機会を」との打診があった。「進学指導連絡会」が意図した通り、「大学との対話」が実現する運びとなったのだ。
その第1回目は、11月、静岡大構内にて、「静岡大の入試問題評価分析報告会」として行われた。出席者は、冊子執筆者代表約30名、静岡大の入試関係者約15名だ。
報告会は、分析評価の趣旨説明、分析に当たっての科目別の総括的な報告を述べた後、科目ごとに評価分析を担当した高校教師と、大学の入試関係者が、入試問題について議論する分科会が行われた。
報告会の冒頭、校長協会を代表して油井校長は、「この報告会が高校、大学の双方にとって建設的な場となることを期待しています」と挨拶した。これに対して、静岡大副学長の荒木信幸教授は、「大学としてはいい評価を受けたいというのが本音ですが、今回、冊子を読むまで当大学の入試問題にどんな評価が下るのか緊張していました。この会を通じてお互いに理解を深めていきたい」と応えた。
入試問題分析について理科の全体報告を行う鈴木孝雄先生。前方の左端は油井校長。右端は静岡大副学長の荒木教授。
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