VIEW21 2001.02  新課程への助走
 中高連携が新課程で果たす役割を探る

中高連携の新しい形

新課程の円滑な立ち上げは
中学校との相互理解が一つの鍵

 新課程は、中学校では高校より一年早く'02年度から全学年一斉に開始される。しかし、多くの中学校では移行措置期間に入った'00年度より、新学習指導要領による指導がスタートしている。中学校の変化を理解することは、これまで以上に高校での指導には欠かせない取り組みとなる。そこで、新課程移行後までを視野に入れて、今後の中学校と高校の新たな連携について考える。


週5日制での指導に広がる不安の声

 '02年度からの学校完全週5日制、'03年度からの新課程に向けて、多くの学校で検討が進められているが、その実施が近付くにつれ、学校現場では改革への期待よりも不安の方が色濃くなっている。
 現在、「最近の新入生は中学時代に受けた塾での懇切丁寧な指導への依存体質が染み付いている」「学習の姿勢が非常に受け身で、授業中のノートの取り方も分かっていない」との声が多く聞かれる。
 このような状況の中で学校完全週5日制が始まると、学校にとっては生徒にしっかりとした自宅学習習慣を身に付けさせることが指導上、非常に重要となる。高校の教科指導は、生徒が自宅で予習・復習をしてくることを想定して計画されている。しかし、現実には高校生の多くが正しい自宅学習習慣を身に付けていないため、授業進度が停滞するなどの様々な弊害が生じている。
 自宅学習に意欲的に取り組むための鍵は、言うまでもなく生徒自身が学ぶことの意味を理解し、自らの学習意欲を向上させることである。そのため「総合的な学習の時間」やボランティア活動をうまく活用して、まず生徒の中に主体的に学ぶ姿勢を育成しようとしている高校もある。また、自宅学習用課題にさらなる工夫を凝らし、授業と自宅での学習を今まで以上に強固に連動させる様々な工夫もなされている。
 教育環境の変化に戸惑う学校が多い中で、現状の課題を正確に把握した上で、あるべき姿に向けてうまく制度改革を利用している学校も散見されるようになった。

中高の協力で積み上がる教科指導が実現

 高校における教科指導の難しさの原因を分析していくと、中学校での指導状況が把握できていないという課題に突き当たることが多い。ここ5~6年、多くの高校では入学直後の学力状況把握と、高校生としての学習習慣の定着指導に力を入れている。しかし、そうしてもなお、教科指導についてくることができない生徒が多いため、「中学校は何を指導しているのか」といういらだちが出てくるのである。
 以前より、高校と中学校が情報を交換し、連携して生徒指導を行うことが、これらの課題解決の鍵を握るのではないかとの声はあった。本誌の昨年度10月号特集「つながる中学校と高校」では、文教大教育学部仙崎武名誉教授が「高校進学率が上昇し、生徒の意識の中では既に中学校と高校はつながっているにも関わらず、中学校と高校の連携強化ができていなかった方が不自然」と指摘している。
 また、同号では、中高連携の実践例として、福島県の中高連携学習指導研究委員会が取り組んでいる「国語・数学・英語のつなぎ教材の作成」を紹介した。つなぎ教材とは、文字通り中学校と高校をつなぐ教材である。高校生がある教科や分野を嫌いになるきっかけは中学校段階でその分野に関する理解が不十分のまま卒業し、高校でさらに高度なレベルを学ぶことに起因すると考え、生徒が起こしやすい誤りがどの学年で、なぜ起きるのかを分析し、それを避けるための工夫を提案している。
 さらに、つなぎ教材作成を担当した数学の教師(中学校6名、高校6名)は、教材ができたというだけでなく、中高の教師間ネットワークができた点も高く評価している。作成を通じて、初めて互いの指導の実状を理解し、中学校の教師は「高校ではこのレベルで教えるから、中学校では最低ここまで習得させなくてはいけない」と分かり、高校の教師は中学校で教えているレベルを念頭に置いて、生徒に向き合えるようになったのである。


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