VIEW21 2001.02  新課程への助走
 中高連携が新課程で果たす役割を探る

 中学校では'02年度から新課程が始まる。現行課程と比べて選択教科が増加し、学習内容は大幅に削減または高校へと移行されている(表1)。これらの変化を正確に把握し、適切な対応を講じていかなければ、高校での教科指導はさらに困難なものとなる。中学校との単なる情報交換というレベルではなく、高校と中学校が協力して現状の中等教育に関する課題の分析、具体的な取り組み策の検討を行うことが必要な時代になっているのだ。

1 中学校での削除項目、移行項目
教科 削除項目、高校へ移行する項目
国語 削除項目 朗読、表現と理解の関連指導、文学史
社会 削除項目 ルネッサンス、ヨーロッパ世界とイスラム世界の接触、江戸幕府の学問奨励、ヨーロッパ近代社会の成立のうち近代科学と文化の発達(歴史的分野)、社会生活における個人の役割、家族の望ましい人間関係、現代の文化と生活、資本主義経済・社会主義経済(公民的分野)
移行項目 物価の動き、財政収支の意味
数学 削除項目 不等式の記号(小2)、四角形の相互の関係、ものの位置の表し方(小4)、台形と多角形の面積、容積、正多角形(小5)、能率的な測定、メートル法の仕組み、度数分布、比の値(小6)、平行、回転運動と対称移動、条件を満たす図形、立体の切断・投影(中1)、数の表現<近似値、二進法、流れ図>(中2)、平方根表(中3)
移行項目 数の集合と四則(中1)、三角形の重心、一元一次不等式、資料の整理(中2)、二次方程式の解の公式、円の性質の一部、相似な図形の面積比・体積比、球の体積・表面積、標本調査、いろいろな事象と関数(中3)
理科 削除項目 溶質による水溶液の違い(中1)、天気図の作成(中2)、情報手段の発展(中3)
移行項目 力とばねの伸び、質量と重さの違い、水の加熱と熱量、比熱、水圧、浮力、月の表面の様子、惑星の表面の様子、外惑星の視運動、花の咲かない植物(中1)、交流と直流、真空放電、電力量、無脊椎動物、日本の天気の特徴(中2)、電解質とイオン、中和反応の量的関係、電池、力の合成と分解、仕事と仕事率、遺伝の規則性、生物の進化、大地の変化の一部、地球上の生物の生存要因(中3)
英語 削除項目 アルファベットの筆記体、3年間で学ぶ語数を1000語程度から900語程度に削減、必修単語を507語から100語に

中高一貫教育は中高接続の切り札か?

 ここで注目したいのは、公立の中高一貫教育校だ。公立の中高一貫教育は'99年度に制度化されており、中学校3年間と高校3年間を合わせた6年間での計画的・継続的な教育展開が広がりつつある(表2)。文部省は「当面、高校の通学範囲(全国で約500区域)に少なくとも1校整備するのが目標である」としている。だが、既存の公立中高一貫教育校は未だ極めて少なく、その教育成果に関しても十分な検証がなされているとは言えない。「拙速ぎりぎりではないか」との声もある。
 高校では学校完全週5日制、新課程への対応に追われ、中高一貫教育の動向に対して教師の関心はあまり高くない。「中高一貫教育校として自校の名前が挙がったらその時に考える」という声を多くの学校で耳にする。現場で生徒を預かる教師にとって、日々直面している様々な課題の解決と中高一貫教育との間にはかなりの距離があるようだ。

2 中高一貫教育の利点
  1. 高校入試の影響を受けないゆとりのある安定的な学校生活を送ることができる。
  2. 6年間の計画的・継続的な教育指導が一貫して展開できる。
  3. 6年間の継続指導により生徒の個性を伸長したり、才能を発見しやすくなる。
  4. 異年齢集団による活動を通して、社会性や豊かな人間性を育成できる。

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