VIEW21 2001.02  新課程への助走
 中高連携が新課程で果たす役割を探る

「制度」以前に中高の相互理解と連携のアクションを

 ある中高一貫教育校の教師は「同じ中高一貫教育と言っても設置の型によって全く状況が違う」と話す。中高一貫教育校の形態の中には、文字通り一つの学校で一貫して学ぶ6年制の中等教育学校型もある(表3)。私立の中高一貫校のイメージが強いせいか、ほとんどの保護者が中高一貫教育校というと、この中等教育学校型を想像する。そのため、大学進学に関して過剰に期待しているというのだ。
 「説明会では、私立の6年制一貫教育校とは同じではないことへの理解を求め、高校卒業段階で『生きる力』を身に付けられるように指導していることを強調している。本来、大学入試に力を入れた教育方針ではないし、公立の中高一貫校のシステムでは、難関大合格のための指導に一本化するのは難しい」とも話す。
 中高一貫教育への期待の一つとして、6年間を通した柔軟な教科指導がある。これに対しても、連携型中高一貫校の教師によると、「中学での指導内容が各校によって多少なりとも違うので、思い切った指導改革は現実的には難しい」という見方が強い。連携型の場合は、双方の設置者が違うので、密接な協力体制を取ることからして簡単ではないのだ。
 現場からは、中高一貫教育としての長所を活かすならば、中等教育学校型が望ましいという意見が多い。しかし、費用の負担が少ない連携型が今後の主流になると予想されている。
 公立の中高一貫教育校には大きな可能性と同時に、様々な解決すべき課題もある。
 「中高一貫教育は万能薬ではない。効能もあれば、副作用もある。重要なのは、中高一貫教育校以外の高校も、今後、中学校の実態を踏まえていない指導は許されないということ。高校以降のことを考えていない中学校も同様。今は各々が担当している学校段階だけを見ていれば済む時代ではない」と、中高一貫教育校の立ち上げに取り組む、多くの教師はそう話す。

 新課程への取り組みが深まるにつれて、「中学校との深い相互理解と協力関係がなければ高校における新課程の成功は難しい」との声が多くなっている。「総合的な学習の時間」に関しても中学校までの指導内容との連結が重要であることは、多くの研究指定校から繰り返し指摘されている。
 また、本誌12月号の「新課程への助走 新教科“情報”への対応と課題」へは大きな反響があった。中でも、中学校までの指導状況が把握できないことに対する不安が多く寄せられた。「自分の地区にある中学校に視察に行くと、学校によってはハード面も含めて既に相当高いレベルでの指導が行われている」「高校側でこれから準備しようと計画しているレベルと大きなズレがある」「自校への進学者が多い複数の中学校はいくつかの地区に分かれているが、地区によって指導状況が全く違い、予想以上に差がある。これで高校での授業が成立するのか」……。中学校との連携強化が、高校での新課程を成功させる重要な視点となるであろう。

3 中高一貫教育の種類
中高一貫教育の種類

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