今年で4回目を
迎えた「進路座談会」は、毎年目的に応じて実施形態を決めているという。
「『進路座談会』は行事に組み込まれているわけではありません。まず、2学年の進路係が『毎年好評なので、今年もやりませんか』と担任会に提案します。たいてい『やりましょう』ということになり、次にどんな形態で行うかを話し合っていきます。今年はその結果、全員参加という形で行うことにしました」(大内先生)
今年度2学年を担任している井上敏憲先生は次のように語る。
「自由参加の場合、勉強に対して意識の高い生徒だけが話を聞きに来るので、参加人数が絞られ質疑応答など3年生と2年生のやり取りが、かなり活発に行えるという利点があります。一方全員参加なら、3年生の貴重な話を2年生全員に聞かせることができます。まだ、勉強に対してあまり意識を持てずにいる生徒に、3年生の話を聞かせる意味は大きい。ただし、LHRを使わなくてはならず、人数が多いため質疑応答がいまひとつ盛り上がらないのが難点です。学年団で話し合った結果、今年は多くの生徒に聞かせることを優先して全員参加にしました」
「座談会」開催決定後には、2年生に「3年生からどんな話が聞きたいか」「どんな経験をした先輩に話を聞きたいか」に関してアンケートを実施。その結果を集計し、3年の学年団に協力を要請した。
「人選は3年の担任会で行いました。まずアンケート結果を見て、部活に一生懸命取り組んだ生徒、夏以降成績がぐんと伸びた生徒というように、求められているタイプごとに候補となる生徒を挙げ、さらに絞り込んでいきました」(竹林先生)
今時の高校生は、自分が努力する様子を他人に話したがらないとよく聞く。同校の3年生にそのような心配はなかったのだろうか。
「3年生には特別な指示は与えませんでした。事前にこんなことを話してほしいと、アンケートの結果を渡しただけです。3年生も昨年度の『進路座談会』を覚えていますから、そのときの話を思い出しながら話をしてくれたのでしょう。もしこれが高校卒業後だったら、それほど勉強しなかったけれど合格できたという話をしてしまう危険はあると思います。大学に入学し楽しい生活を送っていれば、受験の苦しみなどすぐに忘れてしまいますからね。でも、高校3年間で一番勉強に集中している今の時期なら、その心配はありません」(大内先生)
3年生が受験勉強についてリアルに語ってくれるという点でも、2年生が少しでも早く本腰を入れて受験準備に取り掛かるきっかけとなるという意味でも、「進路座談会」の実施時期は11月頃が適当というのが、同校の教師の一致した見解のようだ。
2年生の勉学への
意識を高めるだけでなく、「進路座談会」で話をした3年生も、人前で受験に関して話すことでモチベーションが上がり、良い結果に結び付く生徒が多いという。2年生、3年生、参加者の双方にプラスの効果をもたらしている「進路座談会」。今後、改善したい点はあるのだろうか。
「参加者を希望者のみか2年生全員にするかは、どちらにも一長一短があるので難しいところです。それを解決するために2回実施も考える余地があるかも知れません。まず2年生全員を対象に1回目を行い、次に希望者を募ってより自由に話が聞ける座談会をもう1回開催する。そうすれば、1回目にもっと勉学への意識を高く持ってほしい生徒にも3年生の話を聞いてもらえますし、もっと突っ込んで話を聞きたいと考える意識の高い生徒に対しては2回目の座談会で対応できます。ただ、この時期に2回も実施できるかが難しいところです」(河野先生)
11月といえば3年生にとっては大切な時期だ。その時期に時間を割いてもらうのは、確かに難しいかも知れない。しかし、今回3年生に2年生へ話をしてほしいと依頼すると、依頼された生徒だけでなく他の生徒も「私も話したい」と協力を申し出たという。
「本校には学年を超えたつながりのようなものがあります。それは1、2、3年の1組で一つのチームを組むという縦割り方式で実施する行事や、学年を越えて行う部活動を通じて培われたものです」(河野先生)
そのつながりは同校の財産の一つだ。それがある限り「進路座談会」は少しずつ形を変えながら、先輩から後輩へ受験に立ち向かう心構えを伝える場として続いていくだろう。
毎年、「進路座談会」で話をしてくれる3年生を集め事前打ち合わせを行う。司会をする2学年の教師にとって、あまり面識のない3年生のプロフィールを把握する場となる。
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