VIEW21 2001.04  新課程への助走
 新課程に向けた様々な課題の検討進捗状況

【完全週5日制の検討状況】
学校としての方向性が定まらず教科間の調整に難航

 '03年度カリキュラムを検討する際に避けて通れないのは、'02年度から始まる完全週5日制への対応である。「授業の1単位時間を変更するのか」「学期制を変更するのか」といった対応策を含め、多くの高校では、特に各教科間の単位数の調整に難航している。最終的には、学校としての方向性に従って苦渋の決断をするしかないが、肝心の方向軸(SI)そのものが固めきれないとの声も少なくない。
 今回のアンケート結果では、'02年度以降、土曜日を「完全休日」にすると答えた高校が全体の70%を超えた。「自主学習にして学校を開放」「生徒の自由選択を前提として講座を開設」といった方法を検討している高校は、極めて少数であるという結果になった(グラフ3)。多くの高校が既に土曜日の「完全休日」を前提として完全週5日制に関する課題解決に取り組んでいることが分かる。

土曜日の扱いで公立校と私立校に大きなズレ

 しかし、その実状は公立校と私立校では大きく違う。
 「完全休日」と回答した公立校は、1年前の同じアンケート結果では66.5%だったが、今回では82.8%に増加し、「その他」が25.1%から11.7%へと減少した。公立校が「その他」を選択した理由は、「迷っている、十分に検討できていない」という意味であろう。具体的な代案があるわけではないことを考えると、結果的に公立校は事実上、「完全休日」となる。
 一方、私立校が「完全休日」と回答した数は、31.8%から21.2%に減少し、逆に「その他」は31.0%から59.9%へと急増している。私立校の「その他」は、土曜日を「完全休日」にせず、何か具体的な取り組みを学校として行う方向で検討を進めていることを意味している。
 土曜日を完全休日とするか、教科指導を含む何らかの一斉指導を行うか。そのどちらを選択するとしても、当然、カリキュラムの全体構想に影響を与える。'02年度以降の土曜日の扱いを早期に確定しなかったことは、カリキュラムの検討を停滞させた一因であろう。

生徒と保護者を巻き込んだ自宅学習の改革が必要

 今後、公立校で一番重要な課題となるのは、自宅での学習習慣の定着であり、土・日曜日の自宅学習への指導である。学校の指導と連動した効果的な自宅学習が必要であることは間違いない。
 一部の高校では既に「国・数・英の3教科は範囲を指定したうえで、毎週初めに課題テストを実施し、合格点に達するまで指導・追試を行う」といった土・日曜日の自宅学習習慣の定着への試みが行われている。また、保護者を対象に、自宅学習習慣の重要性や保護者としての具体的なサポート法などを伝える講習会も開かれている。
 しかし、多くの高校は「自宅学習習慣の定着は非常に切実な問題ではあるが、具体的な対策に関してはこれから検討する」としている。生徒自身、そして保護者の意識変革を含めた新たな自宅での学習指導法の模索はこれからも続いていくと思われる。

グラフ3 '02年度完全週5日制の土曜日の方針
グラフ3

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