教育環境の変化の中大学入試対策とのバランスに苦慮
「総合的な学習の時間」の検討で、多くの高校が直面している難問は、入試対策とのバランスである。本来、この両者は二者択一で考えるべきものではない。しかし現実には、校内でこの考え方の足並みを揃えておかないと、検討が深まらないとの声も多い。
「総合的な学習の時間」と入試の関係については、「両者を直結させずに切り離して考えるべき」と考える高校は少なく、現実問題として「完全週5日制や国立大のセンター試験5教科7科目などの状況から、その指導内容に苦慮している」という考え方が多数派になると思われた。
実際、検討が始まってからしばらくの間、大学進学実績の高い高校を中心に、高校現場では「総合的な学習の時間」に対して非常に消極的な捉え方が大勢を占めていた。検討が進んでいる現在も「『総合的な学習の時間』を実施するねらいは理解できるが、具体的な指導内容や成果指標が不明瞭であり、特に入試対策とは両立しないのではないか」と考える高校は少なくない。
検討が深まるにつれ「総合的な学習の時間」への期待は変貌
ところが、今回のアンケート結果では「『総合的な学習の時間』は教科学習の深化や大学入試にも活かせるので積極的に考えていきたい」という声が最も多い(グラフ6上段)。
興味深いのは、この考え方が校内での「総合的な学習の時間」の検討を通して増えてきていることである。現在、入試対策と「総合的な学習の時間」の両立は難しいと感じている高校の中でも、その考え方が「当初から一貫している」よりも、「判断に迷っている」方の割合が高く、60%近い(グラフ6下段)。
校内での検討が深まるにつれ、「総合的な学習の時間」は教科で培った力の深化や入試につながるとの期待感が高まっているようだ。今後、「総合的な学習の時間」が積極的に活用され、校内に定着していくための一つの鍵は、間接的であっても教科で培われる力の深化につながると認知されることにあるだろう。
グラフ6 「総合的な学習の時間」の検討ポイント
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