VIEW21 2001.04  特集 総合学習を軸に考える学校づくり

事例研究1

奈良県立高田高校

主体的な学ぶ力を育てる教科「探究科」
新学習指導要領が告示されるより早くから始まった「探究科」は、「こんな学習をしたい」という生徒の希望から生まれた。学校の外に視野を広げる学習活動は、「学ぶ楽しさ」を体験させる授業として成果を上げ、今後は、自分の進路を探究する方向をも模索しようとしている。


「高田高校実態調査」で判明した生徒の受動的な学習姿勢を変革

 高田高校では現在、1年次に「探究科」という必修の教科が存在する。'96年度から始まったこの授業は、「生徒自身が問題を発見し、課題を設定した後調査・検証し、その結果を発表する」という「総合的な学習の時間」の先駆けとも言える内容となっている。なぜこのような授業が、'96年度という早い時期から始められることになったのだろうか。それは、'94年度からの2年間、文部省(当時)と県の指定を受け、「生徒の能力、興味・関心に応じて多様な選択科目が履修できる教育課程の編成と実施上の工夫」というテーマで、研究を進めることになったのがきっかけだったという。
 「最初は、選択科目を増やすのが目的だったんです。ところが、どのような選択科目を設置するか話し合っていくうちに、多様な選択科目を用意しても、生徒がそれを選択する能力を持っていなければ意味がないのではないか、という意見が出されたのです」
 当時、研究チームに参加していた奥田智先生はこのように語った。
 選択科目を作るにしても、生徒側にどんな要望があるのか分からない。また、多様な選択科目を用意したところで、生徒がそれらの多様な科目から、自分に必要な科目を選び取ることができる力を持っているのかどうかも分からなかった。そこで、生徒の実態を広く把握するため、学習、部活動、家庭生活などに関して調査を行うことになった。その結果から、「自主的、計画的に学習する習慣が確立されていない」「学校の授業に意欲が持てていない」など、高田高校生の実態が明らかになった。
 高校に入学しても、中学時代の受け身的な学習態度から抜け出せずにいる生徒たち。そんな生徒の学習態度を少しでも主体的な方向へ導くために作られたのが「探究科」であったのだ。


奈良県立高田高校
設立80年。普通科の共学校。全校生徒約1082名。前身が女子校であったため、現在も女子生徒の割合が多い。'00年度入試では、国公立大は、大阪大、奈良教育大など、私立大は、同志社大、関西大などに多数の合格者を輩出。4年制大に合計231名が合格した。部活動では、野球部、陸上部、ソフトテニス部などが全国大会に出場。
住所/大和高田市礒野東町6-6 電話/0745(22)0123

写真 松田茂男 写真 番匠文昭
奈良県立高田高校校長
松田茂男
Matsuda Shigeo
教職歴35年。同校に赴任して2年目。「生徒とは目線を合わせて接することを心掛けています」
奈良県立高田高校教諭
番匠文昭
Bansyo Fumiaki
教職歴24年。同校に赴任して11年目。進路指導部長。数学担当。「学校でしか学べないことを学ばせたい」
写真 奥田智 写真 北尾悟
奈良県立高田高校教諭
奥田智
Okuda Satoshi
教職歴16年。同校に赴任して13年目。地歴・公民担当。「生徒の主体性を重んじる高校であり続けたい」
奈良県立高田高校教諭
北尾悟
Kitao Satoru
教職歴12年。同校に赴任して10年目。地歴・公民担当。「回り道を大切にする学習をしてほしい」

<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。