VIEW21 2001.04  特集 総合学習を軸に考える学校づくり

表現力を育成し「学び方を学ぶ」ことで他の教科の学習に活かす

 「探究科」が始まって5年目を迎えた同校。この「探求科」という授業は、どのような効果を同校にもたらしているのだろうか。
 「本校では、1年次からホームルームの時間に小論文指導を行っているんですが、小論文のテーマを選ぶとき、『探究科』で学んだ内容を活かす生徒が多いですね。書くために資料を調べたりということも、『探究科』で事前に行っているので、抵抗なく行うことができます」
 このように話すのは、進路指導部長の番匠文昭先生。松田茂男校長も次のように話した。
 「『探究科』の授業で行う発表やレポート作成などを通して培われる表現力は、他の教科や活動にも必ず活きてきます。自己表現力は、どんなことにおいても必要な能力ですから」
 表現力の向上の他にも、調べ方、学び方を学ぶことの利点も大きいと言う。
 「元々は選択科目を選択する力を育成するために始めた『探究科』でしたが、それよりは、『学び方を学ぶ』効果の方が大きいように感じます」(奥田先生)
 「学び方や調べ方を知っていれば、それは教科の学習にも活かすことができます。『探究科』でテーマを決めてそれについて調べるのと、問題を解いているときに出てきた分からないことについて調べるのは、基本的には同じですから。それに、『探求科』で『学ぶことの面白さ』に気付かせることができれば、それは勉強しようという意欲につながります」(北尾先生)

「探究科」のプラス効果を各教科、教師へと広げていく必要性

 では、「探究科」で生まれたプラス効果は、具体的に他の場面で、どのように活かされているのだろうか。
 「『探究科』に参加している先生方は、その成果を教科の授業やホームルームに取り入れているようです。私も『探究科』の授業を通して、他教科との関連にも注意するようになりました。例えば、『現代社会』の授業の内容は、家庭科や保健と重複するところがあるんです。そんなことは、『探求科』を始めるまでは全く知りませんでした」(奥田先生)
 調べ学習を行うのには、ある程度のまとまった時間が必要だ。ましてや、調べ方から教えていたのでは時間がかかりすぎる。しかし、「探究科」を通して、どの程度の調べ学習を行うことのできる素地が、生徒の中に備わっているのかを、教師全体で共有化できれば、もっと各教科の授業の中で、調べ学習を取り入れる教師も増えるかも知れない。また、「探究科」を通して、どの科目とどの科目の内容が重複しているのかを把握できれば、授業の内容の精選や発展につなげることができるかも知れない。
 「『探究科』のプラス効果をどのように活かしていくべきかを、体系化していくことは今後の課題」と北尾先生は語る。「探究科」のもたらす効果を全校で共有化し、意識的に活用することができれば、さらなる相乗効果を生むことができるのではないだろうか。
 「まだ案でしかありませんが、1年次の『環境』で学んだことを活かしながら、2年次の『物理』と『現代社会』の授業をリンクできないだろうかという考えも出てきています」(北尾先生)

「探究科」を深化させ、
「生き方」「働き方」の探究にも取り組む方向へ

 '03年から始まる「総合的な学習の時間」の先駆けにも見える同校の「探究科」。やはり、'03年に始まる「総合的な学習の時間」は、この「探求科」を深化した形となる可能性が高いという。
 「現在『探究科』は2単位で行っているので、残り1単位をどうするか、という問題はあります。現在の『探究科』は、進路を考えさせるという役割は弱いように思います。あくまでも案ですが、2、3年次にホームルームなどでの小論文指導と関連させた進路学習を1単位組み込んでもいいかも知れません」(北尾先生)
 同校では、'03年に向けたカリキュラム作成が「教育課程委員会」で、そして「総合学習」については「総合学習構想委員会」で、今後話し合われる予定だという。「総合的な学習の時間」の残り1単位がどのような形になるにしろ、大切なのは「『総合学習』が『総合学習』だけで終わらない仕組みづくりだ」と奥田先生も北尾先生も口を揃える。
 「『総合学習』の3単位で、4単位、5単位の効果を生むには、『総合学習』と学校行事や他の教科をリンクさせていくことが不可欠だと思っています」(奥田先生)
 '03年に同校で始まる「総合的な学習の時間」は、「探究科」から得た様々なヒントを活かし、さらに深化させたものになっているに違いない。


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