実態調査を基に生徒の変化を数字で裏付ける
'98年度の「21世紀委員会」の初代座長となった近藤辰夫先生は、富岡西高校の生徒たちの現状をつかむために、各種のデータの分析から始めることにした。
「学校を改革する論拠として、『生徒が変わったから』とただ口で言うだけでは、説得力に欠けます。学校全体の合意をもって改革を行っていくために、まず客観的な資料が必要だと考えました」
近藤先生は、過去10年間の同校入学生の高校入試における得点、入試倍率の変化、在校生の遅刻・早退数の変遷などを調べた。その中でも役に立ったのは、授業の理解度に関する生徒へのアンケート調査だった。この調査は過去にも何度か実施されたことがあり、現在との比較が可能だった。高校1年の段階では、過去も現在も約6割の生徒が「授業が難しい」と感じており、進度が速い高校での指導に戸惑っている様子がうかがえた。以前なら、2、3年次になると「授業が分かる」と答える生徒の数が増えていた。言わば高校生活に順応できていたわけだ。しかし、現在は、学年が上がっても「授業が難しい」と解答する生徒が、約5割にも達するようになった。データから、生徒の「自分で学ぶ力」が低下しており、また、学校側も生徒の変化に対応し切れていない現状が浮き彫りになった。
一方で「21世紀委員会」のメンバーは、富岡西高校の将来像を探るために、総合学科に移行した高校を初めとした全国各地の様々な先進校の取り組みを見学して回った。
「総合学科は、今の多様化した生徒に一番合ったシステムだと思います。しかし、本校は普通科校なので多彩なカリキュラムを用意できるような施設がありません。また地域からは依然として生徒を進学に導く高校としての役割を期待されています。そこで総合学科制の導入は見送ることにしたんです」
最終的に同校が打ち出した指針は「進学校としてあり続ける」。そして「魅力的な学校づくりを行う」だった。その際カギを握るのは、生徒を、どうすれば「自分で学ぶ意欲と力」を持った生徒へと変えられるかということだった。
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