VIEW21 2001.06  新課程への助走
 週5日制への対応状況

公立高校における対応事例

事例(1) 県立A高校

 A高校は某地方の、創立100年を超える伝統校であり、現在も毎年高い進学実績を継続している。9割の生徒が部活動に参加するなど文武両道を実践し、ゆるぎない全人教育の方針に地域社会から強い信頼が寄せられている。


逆転の発想であえて授業時間を短縮する

 A高校においても当初、週5日制が学力向上を阻害するのではとの危惧があった。しかし、教務部を中心とした長期間に渡る校内での検討を経て、現在では今回の変革を学校のさらなる活性化のチャンスとして捉えていこうとの気運が高まっているという。A高校の教務主任は「本校は公立高校としてのオーソドックスなスタイルを堅持します」と語る。
 同校では'02年度から週32コマ(6コマ×5日、ぶら下がりは週2日でLHRと「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)に充てる)に変更すると同時に、授業時間を従来の55分から50分に短縮することを決定した。「50分授業への変更というのは、先生方に緊張感・危機感を持続してもらうにはどうすべきかを工夫した結果なのです。コマ数も減り、授業時間も短くなれば、今までのスタイルでは指導が難しくなります。生徒に「学習力」、つまり自学自習の姿勢を身に付けさせることが不可欠でしょうし、そのためにはどのような授業、また指導が必要なのかを教師自身が考え抜くことが求められます」
 確かに現実問題として、授業時間数の減少は教科指導上の大きな課題である。しかし、7校時を常時設定して部活動の時間を圧迫することになれば、それは同校の文武両道の基本理念に抵触することになる。延べ授業時間を5分でも多く確保したいと考えている学校が多い中、自ら厳しい条件を設定し、そのことにより学校全体の改革意識を高めていこうというのは、まさに逆転の発想と言えるだろう。ちなみに、こうした発想は「総合学習」の検討においても活かされている。

「総合学習」を学校活性化の恰好のチャンスに

 A高校では「総合学習」があらゆる教科と有機的なつながりを持ち、生徒の進路目標達成のための重要な要素になるものとして捉えている。「総合学習」は小論文指導を中心に行う予定だが、同校は従来から小論文指導担当だけでなく、教師全員が専門知識を活かし、課外の中で分担して生徒の志望に合わせた小論文指導を行う態勢を取っていた。「そのため、『総合学習』に切り替わったからといって、負担や不安を感じるということは少ないはずです。それよりも、これからは課外ではなく、授業として指導できますから、より精選して合理的に進められます。今まで以上に指導がやりやすくなる、歓迎すべき変革なのだと力説しています」と教務主任は言う。
 この「総合学習」では担任に加え、それぞれの専門知識を持つ教師の視点と知識が加わるので生徒の視野拡大につながる。また、教師のモチベーションも高まり、良い緊張感が保たれるというわけだ。新課程にかかわる諸問題を、プラス思考と逆転の発想で解決するA高校の取り組みは大いに参考になると思われる。

A高校のカリキュラム案

<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。