VIEW21 2001.06  新課程への助走
 週5日制への対応状況

事例(2) 県立B高校

 B高校は昭和30年代に、地域の高校進学者の増加を受けて創立された。国公立大への合格が100名を超える進学指導実績と合わせ、近年は部活動での活躍にも注目が集まる。生徒の個性を活かした熱心な指導には定評がある。


教師の異動で揺らいだコンセンサス

 B高校では最初に十分な時間をかけてSIを構築し、そのSIに基づいて'03年度カリキュラムを作成した。次に'03年度カリキュラムを踏まえて'02年度カリキュラムを作成するという理想的なプロセスで、1年以上前にカリキュラムを作成している。B高校は全人教育的なSIを強力に推進しているため、'02年度カリキュラムにおいても大学入試科目が偏重されることなく、あらゆる教科の指導を大切にし、ぶら下がりを廃して部活動の時間を確保するなどの特徴がある。反面、国語・数学・英語の単位数の減少、特に数学の単位数減を不安視する声もあった。
 先進的に週5日制、及び新課程への対応に取り組み、早期にカリキュラム検討を進めていたB高校であるが、今年度に入って新たな課題が生じている。B高校が所在する県でも、人事異動により、ほぼ6~7年でほとんどの教師がその学校から異動することになる。B高校では'03年度を迎える前に、'03年度カリキュラムを練り上げた当時のメンバーが同校からほぼ全員いなくなる可能性が高いという。カリキュラム作成当時の中心的メンバーであったC教諭は、教師の異動に起因する問題点を以下のように指摘する。
 B高校におけるカリキュラム作成の検討プロセスを、実際に経験していないために―
(1)案の修正に伴う教科間や教科内の調整の困難さに実感がない。
(2)作成当時の教師が1名しか残っていないような教科では、教科グループとしての認識がカリキュラム作成当時とずれてきている。
(3)教師間の基本認識が揃っていないことと、新カリキュラムでの学習指導法の確立が十分ではないために、新カリキュラム実施後の学習成績に関して、新任の教師が不安を訴えても、確信をもって「大丈夫」と言い切れない。

学校の理念と教科の理念に基づくSI構築を

 公立高校のように人事異動が避けられないところでは、この問題は共通の悩みではないだろうか。また、教師の異動のみならず、国立大のセンター試験5教科7科目実施の方向性など、カリキュラムの根本的な見直しを迫られる可能性はどこの高校にもある。「それでも」とC教諭はカリキュラム作成を先行したメリットを語る。「SIがしっかりと時間をかけて構築できていたので、学校の基本的な方向性は明確になっています。会議でも『これだけのことを3年間で教えるために、これだけの単位が必要なのだ』『学校の理念を優先してカリキュラムを組んだのだから、このコマは外せない』という建設的なやり取りが、今でも続いています。学校の理念と教科の理念、常にこの2つに立ち戻れれば、何とか現実の問題にも対応できると思います」


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