VIEW21 2001.06  創造する 総合的な学習の時間

5教科7科目案をどう受け止めているか

――「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)の導入を2年後に控えて、各校では検討が進められていると思います。医学部の理科3科目案やセンター試験5教科7科目案が出てきたことで、「総合学習」の方向性の修正を検討する学校もあると聞きますし、「総合学習」をやる余裕はないと、教科に読み替えるとの声もあるようですが、各校の「総合学習」に対するお考えをお聞かせください。
吉田 学校として5教科7科目にどう対応するかまだ詰めきれていませんが、「総合学習」を教科に読み替えることはないと思います。
井上 本校では、総合的な力を持ったたくましい生徒を育てるための「倉高ONLY ONE計画」に取り組んでおり、「総合学習」の活動をきちんと保障しよう、という基本姿勢で検討が進んでいます。実は一部の科目などに対して、少し手を緩めてもいいのではないかという意見も出かかったのです。しかし、新課程を検討する委員会では、どの教科も大切で、やるからにはどれも本気でやるんだという強い意志の下、5教科7科目、理科3科目に対応できるカリキュラムをどうつくるかについての活発な議論がありました。「総合学習」の意義を前向きに活かして教科への読み替えはせず、各教科は残りの時間を上手にやり繰りして対応する方向になるはずです。
 5教科7科目の問題と「総合学習」がリンクして論じられることは、本校では今の段階ではありません。たとえ5教科7科目になっても、今まで検討してきたカリキュラムを大幅に見直す状況にはならない気がするのですが……。
上原 地歴・公民が2単位科目でもセンター試験に対応できるかどうかでしょうね。4単位でなければ受験ができないのであれば、カリキュラムを見直す必要も出てくると思います。2単位で対応できるなら、現行とあまり変わらないのではないでしょうか。
山口 最近指摘されている低下した学力とは、知識量ではなく「学び取る力」や「学ぼうとする力」だと思います。だとすれば、「総合学習」を教科に読み替えたところで、学力低下に歯止めをかける有効打とはなりません。むしろ、「総合学習」で学びの意義を考え、意欲的に授業に臨み、主体的に家庭学習や社会活動に取り組む生徒を育てることが、有効な解決策になるのではないでしょうか。

「総合学習」で何を学び取らせるか

――「総合学習」はどのような取り組みになりそうですか。
吉田 本校では、現在取り組んでいる進路学習や1、2年次の小論文指導などをより深化・発展させる形になるだろうと思います。それらの取り組みの結果、生徒は社会に広く目を向けるようになり、進路意識の深まり、広がりも出てきましたが、そこで終わってしまう生徒が少なくありません。夢を描いただけで満足し、夢の実現に不可欠な、努力する姿勢、教科学力の獲得まで到達しない生徒もいます。「総合学習」は教科学力にも相乗的に効果を与えるものにしなければならないと思います。
井上 「総合学習」と教科指導とのバランスを上手に考えてアプローチすべきでしょうね。
上原 学校行事を通して集団における自分の役割だけでなく、社会での自分のあり方を見つめるところにまで高めていきたいと思っています。進学校にはリーダー養成という地域からの期待がありますが、そのために必要な「人間力」を育成する「総合学習」という視点で取り組むことができればと思います。
山口 私が「総合学習」のプランを立てるなら、低学年では教科支援型を目指します。まず先生方に教科指導で困っていること、生徒がこうなったら教えやすいという希望を出してもらいます。そして、お互いに変わらなくてはならない点を洗い出し、コンセンサスを得ながら克服していくことで、教えや学びのパワーアップを図ります。「総合学習」は、そうした教科支援の試みのための時間として捉えることもできるのではないでしょうか。
 本校では詳しい内容はこれからですが、おそらく進路学習、小論文指導、それに社会貢献を考えるきっかけとしてボランティア活動を重視することになるでしょう。


<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。