VIEW21 2001.06  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

高大連携の模索(2)

岡山理科大
理数科の『課題研究』をAO入試の評価対象に

大学で課題研究の合同発表会を実施

 岡山県内にある岡山一宮、倉敷天城、玉島、津山の4高校の理数科では、学校設定科目「課題研究」を開講し、理数各科目の内容を発展・統合させた課題を設定した上で、探究的な学習を指導している。'01年3月22日、4校は岡山理科大において課題研究の合同発表会を開催した。お互いの研究方法・内容に関する理解を深め、学習意欲を喚起すると共に理数科生としての意識高揚、特性の一層の伸長、学力向上を図ることが目的であった。
 発表を行った4校19グループの研究テーマは数学、物理、化学、生物、地学の全てに及び、パソコンやプロジェクターを駆使したプレゼンテーションは、全グループとも驚くほど高いレベルにあった。「ロボット製作」「超伝導物質の試作」などの発表からは、研究結果だけではなく、生徒が実験の失敗から様々なことを学び、試行錯誤しながら成長していくプロセスが具体的に伝わってきた。全体で5時間を超えるプログラムに加え、250名近い高校生が参加していたにもかかわらず、会場には最後まで心地よい緊張感が張りつめていた。自分たちの興味・関心のある研究テーマに生き生きと取り組んでいる理数科の生徒の姿は、「学び」の本来の姿を示すものであった。

高大連携で高校生の資質を伸ばす

 発表会場を提供するなど発表会開催を後援した岡山理科大の野瀬重人助教授は、「理科の素養を備えた有能な人材を世に送り出すことは、理系大学にとって非常に重要な課題です。これからの大学は高校と協力して、生徒を育成するという視点を持つべきです。学生の学力低下を嘆き、理科離れ・数学嫌いを憂えるだけでは問題は解決できません。今後も可能な限り、積極的に高・大の相互協力の可能性を模索したいと考えています」と話す。
 そしてこの4月、岡山理科大の理学部応用物理学科は、'02年度入試において前述の理数科「課題研究」をAO入試の評価対象にすることを決定した。「小論文試験や面接以上に、『課題研究』への取り組みは、その生徒の適性や学びの姿勢をはっきりと読み取らせてくれます」(企画入試部次長・榊原道夫助教授)。岡山理科大の新たな試みは、県内の高校のみならず、近隣の大学からも非常に注目されている。

課題研究合同発表会発表テーマ一覧(発表順)
科目 研究テーマ
数学 ・平面図形(多角形と円の測量) ・sin1°への挑戦
・ゲームを作ろう ・方程式を折り紙と作図により解く
・暗号について
生物 ・微生物の抗菌作用  ・カエルの消化管の長さと餌との関係
・ベンハムのコマによる主観色の研究
・プラナリアの生態を解き明かす
物理 ・電磁推進船の研究  ・虹と空の研究 ・ロボット製作
・フーコーの振り子 ・超伝導
地学 ・太陽の黒点の観測
化学 ・超伝導物質の試作  ・玉島地区の環境測定 ・爆発について
・電池について

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