VIEW21 2001.09  新課程への助走
 週5日制に向けたカリキュラム編成の試み(1)

 「今後、授業の持ち時間が少ない教科の教師を削減することは、授業における全人的教育への影響が大きいだけでなく、部活動を始めとするその他の教育活動の衰退につながりかねません。松江北高校は現在、文武両道を軸に順調に教育活動を実施していますが、その原点は生徒への生活指導にあり、質の高い生活指導の実践には教師間のチームワークが不可欠です。英語や数学を1単位増やすなどの偏ったカリキュラム編成を行うことによって、教師のチームワークを壊してはならないと考えています。教職員が一丸となって同じ方向を向き、組織的に動くことから生まれる教育効果を持続させることが重要です」
 週5日制が実施される一方、国立大学協会がセンター試験5教科7科目受験や医学部志望者の理科3科目受験を方針として打ち出すなど、生徒の進路志望を達成するためには今まで以上に学習の質と量が必要とされる。松江北高校ではそれらの状況を十分承知した上で、大学入試対応へ歪(いびつ)に偏ることは、学校の教育目標達成には好ましくないとの判断を明確に示しているのである。
 部活動に関しても文武両道を学校運営の軸にしている以上、放課後の部活動や全員清掃などの教育活動は極めて大切であり、午後4時を越えて授業が行われることは、適正な学校教育の実践を妨げると考えられている。同様に、新課程で新設される「総合的な学習の時間」や「情報」をなおざりにするとの考えはなく、特に「総合的な学習の時間」は生徒への「生き方指導」や「本質的な進路指導」をしていく上でも非常に重要であるとの認識を持っているのである。
 このように松江北高校では、'02年度以降のカリキュラムを検討するに当たり、学校として決して外してはならない視点を先に確認し、それを遵守した上で、生徒の学力向上のために最適な方法を模索してきた。

45分授業が生徒の学力向上に果たす役割とは?

 その検討の中で浮上してきたのが、従来の〔50分授業×6コマ〕を〔45分授業×7コマ〕に変更するという選択肢である。この変更は生徒の学力向上に関してどのような利点があるのだろうか?
 鞁嶋校長は授業のコマ数が増加する点と、授業時間が5分短くなる点の両方を指導上のプラスにできると語る。

(1)授業コマ数増加のメリット
家庭学習を成功に導くきめ細かい指導が可能

 「週5日制下で、生徒が学力を維持・向上していこうとすれば、生徒自身の自主的家庭学習の習慣が不可欠です。しかし、最近の生徒の持続性や習慣性の欠如を勘案すると、単に週末課題を多めに与えたり、週明けに確認テストを実施したりするだけでは難しいと思います」
 松江北高校はこれからの家庭学習を成功させるためには、緻密な計画が必要であると考えている。
 「家庭学習を実りあるものにするためには、教師の根気強さと授業にかけるより多くのエネルギーが必要です。特に緻密な計画に基づいたきめ細かい教師からの指示がなければ、学習成果の積み上がりは期待できません。45分授業にすることで週2単位の教科も、月・水・金など週3コマにすることが可能です。金曜日に具体的な週末の学習指導を行い、月曜日に確認をする。さらに水曜日に進捗状況をチェックして、アドバイスするなどの、流れを意識した対応も可能になります。
 これからはどれだけ家庭で学習するかが生徒の学力を決定します。そうなれば、日々細かい指示ができるスタイルの方が生徒の学力向上につながると判断しました」


家庭学習を成功させる指導の視点
  • 各教科の年間進度表、テスト範囲、年間行事予定表を生徒及び保護者に明示する
  • 宿題の内容を精選、吟味する
  • 宿題の出し方について、計画性を持ち、教科間の調整を図る
  • 予習、復習について、日々細かい指示を行う

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