VIEW21 2001.09  創造する 総合的な学習の時間

Step 1
組織、役割の決定
トップダウン、ボトムアップの両方から校内の意識変革を

――「総合学習」を成功させるためには、学校の総力を挙げて取り組む必要があると思われますが、スタート段階でのリード役はどこが担うべきでしょうか?

城本 学校で新しい取り組みを行う場合、その内容が明確ならば「これは進路指導部主導でやりましょう」、あるいは「教務部主導にしましょう」と判断できます。しかし、「総合学習」については、学校独自の創意工夫が強く求められていますので、別途、プロジェクトを立ち上げるのがいいと思います。一般的に言えば「総合学習」と進路学習をリンクさせるなら進路指導部主導、教科の枠を越えた科目融合型の授業を目指すなら教務部主導で検討が始まるはずです。また、組織に柔軟性を持たせれば、最初にどちらの主導でスタートしても、多様な目的を組み入れることも可能だと思います。しかし、既存の分掌で「総合学習」の立ち上げを担当する形は、その分掌以外の教師に「総合学習」への課題意識が高まらない懸念があります。日常が多忙であればなおのこと、新しい取り組みには最初の一歩が出ないものです。新しくプロジェクトを発足することで、各教師の当事者意識を高め、自然と取り組みの機運が盛り上がっていくことも期待できます。
 取り組みを活発化する最大の鍵は校長先生の基本姿勢にあると考えています。組織のトップが「総合学習」をどう考えるかで、その学校の取り組みの温度は大きく変わります。校長先生が先頭に立って強力にリーダーシップを発揮すれば、検討の進度はさらに加速します。逆に、校長先生があまり意見を押し付けない、現場の声を尊重するタイプの場合は、教師一人ひとりが問題意識を持って、うまく校長先生を中心に全体を盛り上げていく必要があります。校長先生自身もきっとそれを待っているはずです(笑)。新しい車輪が回り出すまでは、誰かが率先して旗振り役を務める必要がありますね。

 その学校の実状によって、進路指導部主導でも教務部主導でもいいと思います。もちろん、新たにプロジェクトを立ち上げる方法もあります。問題はその学校の中に「総合学習」に夢と情熱を持って本気で打ち込む教師が何人いるかです。
 実際に「総合学習」に取り組むのは現場の教師ですから、どの組織が主導でやっても、本気で取り組む教師がいなければ教育的価値のある「総合学習」は生まれません。その学校の持つ人的パワーを最も活かせる組織づくりが大切だと思います。やる気のある人がいかに動けるかです。

Step 2
現状認識と総括
生徒の実態調査などで教師の間に共通認識をつくり上げる

――改革には方向性の明確化と同時に、現状の課題分析が不可欠だと言われます。「総合学習」の導入にも同じことが言えるのでしょうか?

 教育課程に手を加えるときは、まず生徒の実態を極力客観的に調査し、現状を正しく把握することが必要です。教師は日頃の授業やクラス運営の中で、生徒の実態を感覚的には把握しているものですが、全校的な共通認識にするにはできるだけ多面的な角度からの客観的資料が必要でしょう。全教師が同じ意識で、同じ土俵に上るために、また現状を客観的データに基づいて共有化するために、実態調査の作業は不可欠です。念を入れて教師、保護者へのアンケートも実施すれば、より適切なデータが得られるでしょう。「今の教育システムのどこがよくて、どこに課題があるのか」「周りの教師はどんな問題意識を持っているのか」「保護者は学校をどう見ているのか」など、多面的に客観データを集めて共通土台をつくり、問題点を明らかにしてから「総合学習」の検討に入るべきです。特に学校の主役である生徒の実態調査は欠かせないと思います。


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