国立大の多層化は必至か
国立大が法人に移行することになれば、実質的に私立大との競争は激しくなる。方針の3番目では「大学に第三者評価による競争原理を導入する」となっている。この項目は既に、大学評価・学位授与機構による評価が動き出していることや、'95年度からのCOE(中核的研究拠点)など重点的に資金を配分する流れができつつあることなどから、馴染みがないわけではない。評価結果に応じて大学ごとの資金配分にさらに傾斜を掛ければ、一部で苦しい対応を迫られる大学も出る。方針では「国公私立『トップ30』を世界最高水準に育成」するとしているが、そのためには、私立大の評価も厳格にしなければならないし、資金の重点配分をさらに進める必要もあるだろう。その結果、日本の大学もアメリカのように入学者選抜でいわゆる競争選抜が残る大学とそうでない入学要件選択型や開放型の大学に分かれていくと思われる。現在の国立大学がすべて同様に、センター試験5教科7科目というのも成立しにくい話であり、恐らく、入試の方法についてもいくつかのグループができるのではないだろうか。
大学の中身はどう変わるのか
分化する大学・大学院の機能
冒頭で述べた「日本経済活性化のための構造改革プラン」では再編・統合、法人化、評価以外に「大学発の新産業創出の加速」、「世界に通用するプロフェッショナルの育成」、「社会・雇用の変化に対応できる人材の育成」という項目が挙げられている。
最大の変化は、大学と大学院の機能が従来と違って分化していくことであろう。(図2)これまで大学は、大学院と同様に研究を重視してきた。しかしこれからは評価による実績が重視されたり、プロフェッショナル・スクールの重点整備が行われたりするわけだから、当然これまでと同じというわけにはいかなくなる。既に改革が始まっている大学の動きを見れば分かるように、大学の学部は教養教育を重視し、高度な専門教育は大学院でということになる。
現在の大学院重点化構想では、最先端の研究を行う研究大学院やプロフェッショナル・スクールと呼ばれる専門大学院を持ち、むしろ大学院に重点を置いた大学が出てきている。一方、学部で語学や情報などのカリキュラムを充実させ、教養教育で勝負して卒業と同時に社会へ人材を送り出す役割を充実させようとしている大学もある。ここでは、大学院について少し詳しく報告する。
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