VIEW21 2001.09  特集 国際化を視野に入れた進路観の養成

事例研究3

兵庫県立姫路工大附属高校

他者理解・自己理解に立脚した国際理解教育

兵庫県立姫路工大附属高校
1994年(平成6年)創立。設置科は総合科学科。男女共学で生徒数は1学年約160名。1年次から姫路工大の教授の特別授業を受講する高大連携教育、生徒個人のホームページの立ち上げをはじめとする情報教育など、国際理解教育以外にも様々な取り組みを行っている。特別推薦入学制度による姫路工大進学者をはじめ、国公立大、私立大に多数の合格者が輩出。
住所/兵庫県赤穂郡上郡町光都3-11-1 電話/0791(58)0722


他者の意見を聞き自己理解を深めていく「文章表現コンクール」

 姫路工大附属高校は、理系志望者が全体の4分の3を占め、進学面でも姫路工大をはじめ全国の大学の理系学部に多くの生徒が進学している。
 「国際感覚豊かな科学者・技術者となる基礎をつくるのが本校の教育目標です。本校の校歌は詞・曲共に1期生の生徒に公募したのですが、その中にも『めざせ世界のパイオニア』と謳われています」
 副校長の山根誠也先生は、教師はもちろん、生徒たちも学校全体が目指すものをよく理解していると語る。
 同校では、国際理解、異文化理解は他者を理解する力があって初めて成り立つという考えの下、生徒の日常に根ざした場面で他者理解のための取り組みを積極的に行っている。
 「文章表現コンクール」は、1、2年生の全生徒と全教師が参加する、学年・クラスの枠を取り払った活動だ。まず、新聞や雑誌から生徒と教師が選んだ記事の切り抜きを冊子にまとめ生徒に配布。生徒は自分が関心を持った記事を一つ選ぶ。そして同じ記事を選んだ生徒同士が集まってグループとなり、活動が始まる。
 「各生徒は、最初にその記事に対する意見を600字以内でまとめます。それをグループの生徒全員で読み合い、議論を始めます。議論を進める中で、自分の意見が深まったり、変わったりしますから、その結果を踏まえて生徒は自分の文章を書き直します。さらに、それをまたみんなで読み合って、グループ内で最優秀作品を選ぶのです。同じ学校で学ぶ他の生徒の考えや意見を知り、自分の世界を広げたり、深めたりすることが目的です」(山根先生)
 優秀作品は“意見が自分と同じかどうか”ではなく、あくまで“どの文章が一番説得力があるか”という視点で選ぶ。ある2年生の男子生徒は「議論では『何言ってんだ?』と思っても、後で書いたものを読むと『そうか、こんな考え方もあるのか』と感心させられることもあった」と振り返る。
 「1、2年生が混在するグループでは、1年生が2年生に対して意見を言うシーンもあります。こういった活動を通して、生徒は他者とスムーズにコミュニケーションができ、自分とは異なる考えを受け入れることができるようになるのです。将来、科学者・技術者として、他者の考えを受け入れ、自分の考えを深めることのできる人間を育てたいと思っています」(山根先生)


写真 山根誠也 写真 武井雅弘
兵庫県立姫路工大附属高校副校長
山根誠也
Yamane Seiya
教職歴30年。同校赴任2年目。「自分の力をよい方向に活かして、他者と共生できる生徒を育てたい」
兵庫県立姫路工大附属高校教諭
武井雅弘
Takei Masahiro
教職歴14年。同校赴任7年目。英語担当。「グローバルに考え、ローカルに行動する人材を育てたい」

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