VIEW21 2001.10  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 選択力を育てる指導

大学研究 ■part 1■ 調べ学習
難易度だけでない幅広い視野で大学を研究

 大学研究は、自分に最も合った大学を選択できるように情報を集める作業である。目指す職業に就くために必要な学問を身に付けられる大学、学びたい学問が学べる学部・学科を設置している大学はどこかという視点で研究させる。生徒の中には入試の難易度で、調べる大学を決めようとする者もいるが、あくまで自分にふさわしい大学を見つけることが本筋であることを理解させ、広い視野を持って多くの選択肢の中から志望校を決めるように促す。
 調べる内容は、学問の中身にかかわる部分として、その学部・学科の研究上の特徴、教員陣の概要、講義や講座(ゼミ)の概要、施設・設備の充実度など。そして、入り口情報として入試科目、学費、出口情報として卒業後の進路、大学院への進学実績など。他に校風、キャンパスの環境、所在地などの情報も必要だ。学問に関する一定の理解は学部・学科研究で得られているはずだが、同じ名称の学部・学科でも大学ごとに研究内容が異なるので、この段階できちんと調べさせたい。
 大学研究で大切なのは、学部・学科研究同様、生徒が自分の手と頭を使って調べ、志望校を選択することだ。そのための調べるルートはこちらで示したい。調べる材料には大学案内、シラバス、ハートシステム(大学入試センターによるオンラインの大学情報システム)、大学のホームページなどがある。最近の大学案内は学ぶ内容が詳しく書いてあるものが多いが、研究内容をより詳しく調べるにはシラバスが便利だ。ただ、公式にシラバスを高校に配付している大学は少ないので、校長や進路指導部長の名前で「生徒の大学・学部選択の一助として1部分けていただきたい」とお願いするとよいだろう。
 大学のホームページに関しては、新設や改組されたばかりの大学、学部・学科の情報量が多く、伝統的な大学、学部・学科の情報量は少ない傾向がある。ややもすると生徒は情報量の多いところに飛びつくので、生徒には、情報の受け手になるのでなく、こちら側から情報を引き出す姿勢が大切であることを伝えておきたい。

大学の楽しさを教えて生徒の関心を高める

 大学研究にグループで取り組む場合は、同じ大学を志望する生徒同士、あるいは似たような学部・学科を志望する生徒同士でグループを組ませる。同じ大学を調べていても、人が変われば着眼点が異なるため、様々な情報を共有できる利点がある。
 調べた内容については、学部・学科研究同様、発表会などの機会を持ちたい。
 また、大学研究の前、まだ大学についての知識が浅いときに、教師の側から「大学(生活)の面白さ、楽しさ、大変さ」(表参照)を教師の体験を交えて話し、大学への関心を一気に高め、その関心を調べ学習に取り組むきっかけにしたい。「高校とは違う大学」への生徒の憧れを駆り立てて、そのエネルギーを活用するやり方だ。大学に対する知識が少ないほど効果が高いので、大学研究の前でなく、学部・学科研究の前に話をするのもよいだろう。


大学生活をイメージさせる項目
(1)大学ってどんなところ?
・講義のアカデミックさ、難しさ
・面白い講義、名物教授
・試験の方法
・卒業論文
(2)ゼミって何?
・高校の授業との違い
・教授とのつきあい方
・講義の難しさ、面白さ
(3)サークルって何?
・こんなサークルがある
・サークル活動の自由さ
(4)生活費はどのくらい?
・意外な費用にこんなものがある
(5)大学生ってどんなアルバイトをしているの?
(6)大学以外の活動(セカンドスクールや奉仕活動など)をする余裕はあるの?
(7)大学院にはどうやって進むの?
(8)就職活動はどうするの?

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