VIEW21 2001.10  新課程への助走
 週5日制に向けたカリキュラム編成の試み(2)

「改革の痛み」を共有し
時間割と定期考査も大きく変革

 同校では現在の65分授業についても再度、45分授業や50分授業と比較しながら、その長所・短所を検討した。「65分授業を継続実施することを決定した最大の理由は、実授業時数が50分授業に比べて3年間で9.6単位増え、理系IIコースを設置するのに有利だったことです」(池田先生)
 同校では'02年度から「時間割上の2学期制」を導入する。これまで2週間のA・B週で組んでいた時間割を、さらに前・後期の2期に分けることで、1単位の授業が現在の0.5単位から、1週当たり0.25単位刻みでの細かな調整が可能になる。
 「理科3科目に生物の補習だけで対応しようとすれば、生物の教師だけが大変な負担増になります。それを避けるために各教科からの均等な単位減を考えました。改革の『痛みの共有』が、学校全体で取り組む意識を向上させ、先生方に授業内容を厳選してもらうきっかけにもなります」(西川先生)
 さらに'02年度からは現行の1学期中間考査を廃止し、単位が少ない科目の実授業時数を確保する。ただし、単位数の多い科目(50分4単位以上)の試験範囲の適正さを保つために、1日だけ臨時考査(3教科)を実施する。
 そして、'03年度からは火曜日のみ時制を改正し、LHRと「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)を1・2校時に組み込んで連続で実施する予定である。全校朝礼もこの中に組み込むことで、1週間で24単位の実授業時数を確保するのがねらいだ。「まだ詳細は検討中ですが、この時間はLHR、『総合学習』、教科『情報』、そして行事まですべてリンクさせた内容にまで高めたいと考えています」(井上先生)

中学校のカリキュラムを視野に入れ
1年時に基礎学力を充実

 同校が新カリキュラムの編成に際して、中学校の新課程導入による高校の新入生の学力変化まで視野に入れている点は、大いに参考になると思われる。
 「中学の指導内容が厳選され、生徒は知識量が少ない状態で高校に入学してきます。一方で大学入試は従来通りに行われることが予想されますから、高校での指導が従来通りということは決してあり得ません。新カリキュラムでは1年生は国・数・英を中心に履修し、理科・地歴を2、3年に移しています。きちんと基本を習得させたいということもありますが、例えば、数学の基本を早く身に付けた方が物理の授業をスムーズに進められるといった共通理解が校内にあるからです」(池田先生)
 もちろん、その一方で力学やイオンなど、中学校で扱わない内容を理科総合Aの時間を活用して指導するなど、中学の復習を十分に行う構想もあるという。そして、65分授業体制を様々な工夫をこらし維持することによって、部活動時間の確保、勉強と部活動の両立など、同校の良い伝統を守っていこうとしている。
 西川先生は、最後に力を込めてこう語る。
 「カリキュラムを早く決定したのは、各教科に責任を持って対応できる青写真を構築してもらうためです。本校では長い間、次世代を担う人材が輩出してきました。この点は地域からの期待でもあり、これからも必ず応えていくつもりです」


65分授業の継続で小倉高校の
実授業時間数が9.6単位増える仕組み
 1週当たりの実授業時間数は、基準となる50分授業の場合、
(1)6限×5日-2限(LHRと「総合学習」)=28単位(50分)
 一方、65分授業を継続する小倉高校では、下記のように'03年度から時制を火曜日のみ改正して、変則6限とすることで、火曜日も授業を4限確保している。
(2)5限×5日-1限(LHR+「総合学習」)=24単位(65分)
 これを50分に換算すると、65(分)×24(単位)÷50(分)=31.2(単位)となる。
したがって、1学年当たり31.2-28=3.2単位増となり、3年間では9.6単位が増えることになる。

小倉高校の新火曜時制('03年度より)
【通常時制】
I 8:50~ 9:55  
II 10:05~11:10  
III 11:25~12:30  
IV 13:15~14:20  
V 14:30~15:35  
【新火曜時制】
I 8:35~ 9:20 LHR
II 9:20~10:05 総合学習 各45分を連続で実施
III 10:15~11:20  
IV 11:35~12:40 始業式、終業式の日などに実施することにより、50分1単位を確保する。
V 13:25~14:30
VI 14:40~15:45

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