VIEW21 2001.10  新課程への助走
 週5日制に向けたカリキュラム編成の試み(2)

事例2

大阪府立大手前高校の場合

 大手前高校では'00年度から新たに2学期制を導入し、半期ごとに生徒の単位認定を行っている。同校の奥田育秀教務主任に2学期制・半期単位認定の実施に至った背景と今後の展望についてうかがった。


積極的な改革推進から生まれた
「大手前21世紀委員会」

 大阪府内で有数の伝統を誇る大手前高校においても、家庭学習習慣が定着していない生徒が増加し、それに伴い学力向上が以前のようにはいかない状況が目立ってきていた。
 「『このままでは地域の期待に応えることができない』という危機感の高まりを背景に、学校全体に活力を生み出すことを目的とした『大手前21世紀委員会』(以下『21世紀委』)が'98年8月に発足しました」と奥田先生は振り返る。
 「21世紀委」は同年秋に保護者・生徒を対象とするアンケートなども実施し、改革に必要な意見を広く求めた。最初に「地域から求められている大手前高校の将来像」を明確にしてから、様々な学校の改革に取り組んだのである。同校では先に'03年度カリキュラムを作成し、その後'02年度、'01年度カリキュラムを作成するという理想的な手順を踏むことができたが、これは同校が目指す姿をいち早く校内で共有化できていたからである。そして活性化の目玉として「2学期制導入・半期ごとの単位認定」が'00年度から実施されることになった。
 '95年度より実施している現在の65分授業は'02年度以降も継続する。「本校では'95年度の65分授業導入に際して、そのメリット・デメリットを徹底的に検討して実施に踏み切りました。それから7年、65分授業の特性を活かした授業の進め方の工夫なども校内に定着してきています。積み上げてきた知恵を、工夫しながら活かしていくことも大事です」

2学期制と半期単位認定制を活かした
意識改革のねらい

 2学期制を導入し、半期ごとに単位を認定するメリットについて、奥田先生はこう説明する。
 「2学期制の長所の一つは、文理分けが2年後期から可能であるという点です。2年生の最初から文理分けを行うには、1年生の早い段階で、生徒に自分の適性を判断させていくことになります。2学期制で半期単位認定が可能ならば、2年生の後半から文理別のクラス替えができます。前期・後期の時間割の組替えなど、教務部としての負担は増えますが、今まで2年生の夏休み明けというと、いわゆる中だるみを起こしやすい時期で、生徒の緊張感を維持するのも大変でした。ところが、2年後期から文理に分かれ、クラスも変わるとなると、生徒の中に高校生活も後半なのだという意識が自然と芽生えます」
 2学期制のメリットとしては他にも「65分授業の3学期制の場合、合計単位数が減少して年間32単位を確保できません。しかし、2学期制と65分授業を併用すれば、半期で16単位分、年間で32単位分のカリキュラムが編成できます」(奥田先生)という利点もある。定着してきた65分授業を継続しつつ、2学期制のメリットを最大限活かせるスタイルをとることができたのだ。


2学期制のメリット
  • 高校3年間を全体で6学期と捉えることで、2年後期からの文理分けが可能となるので、文理選択の決定時期を2年前期まで移行できる。
  • 前期に基礎、後期に応用などの柔軟な科目設定が可能となる。
  • 卒業必要単位数を3年前期までに確保させ、3年後期は全科目を学校設定科目として入試対策の学習に集中させることが可能。

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