'97年、館林高校の教師たちは、手分けをして学区内の中学校を1校1校訪問していた。
目的は館林高校の教育方針を、中学校の教師に説明すること。だがもう一つ、教師たちには学校訪問を通して知りたいことがあった。それは「地元の中学校の教師や生徒が、館林高校をどのように見ているか」ということだ。
当時、館林高校の大学進学実績は上昇傾向にあった。しかしそれとは反対に、同校への進学を希望する中学生の数は減ってきていたのだ。そして'98年度入試では、ついに定員割れになった。危機感はすべての教師が抱いていたと針谷丞二先生は当時を振り返る。
「本校は、伝統校であるという以上の特色を地域にアピールすることが、うまくできていなかったと思います。訪問先の中学校の先生方は『館林高校は進学先として避けた方がいいという指導はしていないし、生徒もそんなことは思ってないはずですよ』と皆さんおっしゃいました。恐らくその通りでしょう。つまり本校は中学校の先生や生徒から悪いイメージを持たれているわけではないが、魅力ある学校として映っているわけでもないのだと、私は感じました。もちろん当時も本校は頑張っていたんですよ。進路指導の取り組みにも力を入れてきたし、部活動の実績も公立の普通科高校としては胸を張れるものだったのです。しかし様々な取り組みを体系化できていたかというと、確かに未整理な部分もありました」
同校には
内なる課題もあった。生徒の質の変化だ。'98年、針谷先生は3年ぶりに1年生を担任した。そのとき、受け身の生徒が増えていることを痛感した。
「自ら進んで勉強しようという生徒が少なくなっていました。テストでも、昔の生徒は少しでも良い点を取ろうとしたのに、今の生徒は執着がない。それに何度も同じことを説明しないと覚えなくなりました」
志願者数の減少と生徒の変容。解決しなくてはいけない二つの問題を抱えて、同校は早急に打開策を打ち出していく必要があった。
「本校は、入学してくる生徒のほとんどが大学進学を希望している高校です。やはり進学校としての看板は外せません。それではどういう性格を持った進学校にしていけばよいのか。一つは徹底した学習指導です。受け身の生徒が多いのなら、課外授業や補習を増やすなど、教師が生徒を引き上げながら学力の底上げを図っていくことも必要だと考えました。また、小人数制授業や習熟度別授業など、授業の充実も必要です。でも、最も重要なのは自ら目的を持って学ぶ生徒を育てることです。細やかな学習指導と、生徒の自主性を伸ばす指導。異なる性格の二つの取り組みを、本校の両輪に位置付けることにしたのです。そしてこの二つを、館林高校の特色として地域にアピールしていこうと私たちは考えたのです」(針谷先生)
伝統校であるという以上の魅力を地域にどうアピールしていくか。館林高校の未来に危機感を抱いた教師たちは、自校の特色づくりについて話し合いを重ねていった。
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