VIEW21 2001.10  指導変革の軌跡 群馬県立館林高校

翌年の'99年度、
館林高校では進路にかかわる三つの行事をスタートさせた。社会の第一線で働く同校卒業生による職業別進路講演会、大学教授が模擬授業を行う学部・学科別進路講演会、県内外の企業や公的機関を訪問する職業研究訪問だ。
 「それぞれの行事自体は、他の多くの学校でも始められていることですし、目新しさはそれほどありません。でも行事ごとに生徒の心を揺さぶるような何らかの工夫をしていけば、きっと実りの多いものになるはずです。先進的なことに挑戦するのは、主体的な生徒がもっと増えてからの方がいいと私たちは考えました」(針谷先生)
 職業別進路講演会は、夏休み前の土曜日、3限と4限を使って実施されている。対象となる学年は1年生と2年生。同校は1、2年次合計で14学級あるので、目処として毎年14人の社会人を招いている。できるだけ幅広い分野を網羅することを念頭に置いて、同窓会名簿から選び出し、依頼する形が多いという。
 「生徒の希望をできる限り優先するため、講演会によっては100人近い生徒が集まるところもあれば、20人程度の小規模のものもあります。講師の方には働くことの魅力や、その職業に就くにはどんな努力が必要となるかといった話をしていただくようにお願いしています」(針谷先生)
 ユニークなのは、生徒に必ず二つの講演を聞かせるようにしている点だ。講師の方には3限目に最初の講演、4限目に同じ内容で2度目の講演をやっていただく。生徒の側は、3限目と4限目で別の講演会に出席する。このねらいを、松崎健一先生は次のように話す。
 「例えば、医者になりたいという生徒は、それにしか目が行かなくなりがちです。でも二つの講演を聞くことで、医療の世界以外のことも知ることができる。進路を絞ることも大事ですが、それと同じぐらい進路を広げることも重要ですからね」

“必ず二つの講演を
生徒に聞かせる”のは、実は同校の取り組みのポイントの一つだ。学部・学科別進路講演会でも、やはり二つの講演を聞かせるようにしている。
 '01年度の学部・学科別進路講演会は、10月22日~26日の放課後に実施される予定だ。講師として招く大学教授は約20名。教授にはそれぞれ自分の研究テーマについて話をしてもらう。対象学年は1、2年生。二つの講義を聞くことを義務付けられているが、興味があればそれ以上聴講することも可能だ。
 「正直に言うと、去年の学部・学科別進路講演会は失敗でした。アポイントメントが取れた先生を随時お呼びする形で時期を区切らずに長期間にわたって行ったため、盛り上がりに欠けたんです。そこで今年は10月の第4週を『学部・学科別進路講演会週間』と位置付け、よりイベント性を持たせることにしました」(針谷先生)
 2年生は10月上旬に修学旅行が組まれている。旅行から帰ってきた直後に講演会を設定することで、「さあ大学へ」という意識に切り替えようというねらいがある。
 さらに今年は新たな工夫も付け加えた。従来は講師の選定は大学側に一任していた。だが今年はほとんどの場合、担当になった飯島洋先生自らが大学のホームページや『大学案内』をチェックして、「この先生に来ていただきたい」と思える教授を探し出し、Eメールで依頼をしたのだ。

まだある参考にしたい取り組み
学習進路ノート
館林高校では「学習進路ノート」を制作し、生徒に日々の生活や勉強内容を毎日書かせている。担任は生徒のノートを読んだ上でコメントを書き込み生徒に返す。生徒の生活状況や学習状況を把握できるだけでなく、コミュニケーションのツールにもなっている。また生徒に計画性のある生活や学習を身に付けさせることも目的としている。

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