「高校生でも分かりやすく、興味を持てるテーマで話してくださいそうな先生を選んでお願いをしました。直接やりとりをした方が、内容に関するより細かい打ち合わせができるというメリットもあります」(飯島先生)
職業研究訪問は、昨年度は11月22日に丸1日かけて実施された。対象学年は1年生。生徒は県内と東京にある21の企業・公的機関の中から、自分が興味のあるところを選んだ。東京組は1日で1件だが、県内組は午前・午後でそれぞれ1か所ずつの計2件を訪問した。
この職業研究訪問では、生徒の自主性をできるだけ引き出すような工夫をした。当日に備えて、生徒はあらかじめインターネットなどを活用して企業研究を行い、質問項目を考える。そして、現場では生徒がインタビューし、職場担当者がそれに答えるという形をとったのだ。終了後は生徒にレポートを作成させ、『企業訪問』という1冊の本にまとめ上げた。
「私はあるコンピュータソフト会社への引率を担当したのですが、生徒の質問に担当者の方が熱く反応して、5分も10分も語ってくださるシーンもありました。それを聞く生徒の目も真剣で、やってよかったと思いました」(飯島先生)
'98年度に
定員割れとなった館林高校の志願状況は、'99年以降は一転増加傾向にある。「学校の取り組みが地域に評価され始めた結果と受け止めたい」と針谷先生は語る。また、大学への進学実績も順調に伸びている。
だが何より針谷先生は、最近生徒たちの雰囲気が良い方向へと変化しつつあると感じている。
「文化祭の前に、実行委員長の生徒が全校生徒の前で話す機会があったのですが、教師から言わされているうわべの言葉ではなく、自分の言葉で喋っているのが伝わってきたんです。リーダーとしての資質が育ってきているという手応えをつかみました。そういう生徒が何人か現れてきています」
職業別進路講演会、学部・学科別進路講演会、職業研究訪問の三つの行事は、ある程度軌道に乗りつつある。館林高校では今、次の一手を考えている。
「現在の指導は、将来の職業から自分の生き方を見つけさせようというものです。でも本当はもう一歩進んで、今、私たちの生きる社会がどんな問題を抱えていて、それに対して自分はどう向き合うか、というところまで考えさせたい。例えば、環境問題や国際問題など、自分が興味を持った課題を追究しながら、それを解決するにはどんな方法があるか、自分には何ができるかを提示させるといったことも一つの手法であり、それが将来の職業選択へとつながっていくと思うのです。『総合的な学習の時間』も視野に入れながら、具体的な展開方法を現在検討中です」
館林高校の“自ら目的を持って学ぶ生徒を育てる指導”は、今はまだ深化の一過程だ。だが、既に十分魅力的で、地域にアピールできる高校へと生まれ変わりつつある。
職業別進路講演会では、講師の社会人は2コマ連続で同じ内容の講演を行った。生徒が二つの講演を聴講することで、幅広い視野で進路を考えられるよう配慮したためだ。
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