VIEW21 2001.10  特集 加速する大学の教育改革

改革に向けた意欲的な取り組みが始まる

 日本が先端分野を中心に技術力の強化を図るためには、工学教育の充実を通じて、優秀な技術者を早急に育成することが不可欠である。理工系の大学関係者が教育改革に本腰を入れ始めた一つの証が、'99年に発足したJABEE(ジャビー、日本技術者教育認定機構)である。JABEEは大学などの高等教育機関の技術者教育プログラムが、社会の要求水準を満たしているかを審査・認定する第三者機関である。工学部の各学科だけでなく、理学部や農学部などの技術者養成系の各学部・学科も認定審査の対象としている。'00年度には20大学・学部・学科(工業高等専門学校1校を含む)の教育プログラムに対して、認定審査を試行した。さらに'01年度は、正式な認定審査も開始する予定だ。
 JABEEの活動について、副会長の大橋秀雄工学院大学長は次のように説明する。
 「審査・認定というと、一定の基準を設けて、それより上は合格、下は不合格といったものをイメージされるかも知れません。しかし、それでは肝心な大学の個性化を妨げることになってしまいます。大学にはそれぞれ目標があり、すべての工学部が同じ方向を目指す必要はありません。JABEEが重視するのは『その大学が、どんな学生を育てるためにどのような具体的な教育目標を設定し、そのためにどんな教育プログラムを組んでいるのか』ということです。そして、その目標が社会が求める水準に達しているか、実際に目標を達成できているかといった点を審査します。決して一元的な価値基準から、大学を序列化するものではありません」

第三者評価が高校生の選択の指針に

 その大学ならではの具体的な教育目標とプログラムを確立し、それを学内外に明示することが今後一層重要になってくる。工学院大では国際基礎工学科がJABEEの認定審査の試行を受けている。同学科の教育目標は、世界で通用するグローバルエンジニアを育てるというものだ。国際基礎工学科の古屋興二教授は次のように語る。
 「様々な問題に対応できる国際水準の技術者になるためには、土台となる基礎的な工学知識が不可欠となります。そのために1、2年次は基礎学問を徹底的に教え込み、3年次以降は専門科目を取得する他に企業から研究開発テーマをもらい、それに取り組むことで考える力を養います。国際的に活躍できる人材になるには英語も必要ですので、4年間を通して週3回ネイティブによる英語の授業を行っています」
 各大学がそれぞれが掲げた教育目標に沿って学生を育てる。それが実現できている大学のみが社会や企業から評価される。高校生は第三者機関による大学評価を参考にしながら、教育目標と教育プログラムを吟味して、より自分に合った進学先を選ぶ。そういう時代の扉を、まずは工学部が開けようとしている。

資料1

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