VIEW21 2001.10  特集 加速する大学の教育改革

参考資料

改革の全体像を理解するためのキーワード

――大学の教育改革はここまで進んでいる――

 様々なシーンで進められている大学の教育改革。その概要を把握するための重要キーワードをここに紹介する。

リメディアル教育(補完教育)

 大学教育を受けるために必要な基礎学力が不足している学生に対して、一定のレベルまで学力を引き上げることを目的とした補習を行うこと。基礎学力の不足の原因としては、(1)専攻に必要な科目を高校時代に履修していない(例:医学部生にとっての「生物」)、(2)高校で履修しても、入試科目に課されていないなどの理由で、最低限のレベルが身に付いていない(例:工学部生にとっての「物理」)、の二つのケースがある。
 入試方式の多様化に伴い、入学してくる学生の学力が多様化することは避けられない。リメディアル教育へ取り組む大学は、今後、さらに増加することが予想される。大学がリメディアル教育の実施を避けるためには、大学教育で必要とされる教科・科目を入試科目として課し、その教科・科目に求める学習到達度を受験生に明示するなどの工夫が重要となる。

教養教育改革

 '91年の大学設置基準の大綱化以降、国立大の教養部解体が進み、専門科目重視の傾向が強まった。しかし、その結果、一般教養科目は人文・社会・自然の各科目が羅列的に並び、「メニューあってカリキュラムなし」と、教員からも学生からも厳しい評価を受けることになった。
 社会が複雑化する中で、幅広い知識を持ち、総合的な視点から物事を判断できる人材の育成が大学教育に強く求められている。そのため高度専門教育の場は大学院段階に譲り、学部では教養教育と専門基礎教育を重視し、社会に出たときに役に立ち、また専門科目にも有機的に結び付くような内容に改善しようという動きが強まっているのである。
 例えば、経営学部ならば「倫理」を従来の内容から、「企業の利潤追求と社会責任」といった将来ビジネスマンとして働くために必要な倫理観の養成へと変えることなどが考えられる。また“現代社会の教養”として、小人数による実践的な英語教育や、コンピュータリテラシー教育の充実などを掲げる大学も増えてきている。

ファカルティー・ディベロップメント(教授法改善)

 ファカルティー・ディベロップメント(以下、FD)とは、教授法の改善を目的とした大学教員の組織的な研究開発のこと。学生に対する授業評価アンケート、教員相互の授業内容チェックなどを通じて問題点を抽出し、各授業がその教育目標に沿っているか、学生の理解状況に合っているか、などを分析する。さらに板書や説明の仕方、OHPやビデオなどの効果的な利用方法など、細かい授業技術についても研究を行っていく。
 有志の教員による実施から、大学全体での取り組みまで、状況に差異はあるものの、FDを導入している大学は近年確実に増加している。北海道大のように毎年宿泊を伴う研修を実施している大学や、立命館大のようにFD研究に学生を参加させている大学もある。大学の意識が長年の研究重視から教育重視に変わりつつある一つの現れと言える。
 また'99年に大学設置基準が改正され、「大学は、教育内容及び教育方法の改善を図るための組織的な研修及び研究の実施に努めなければならない」とされたことも、この変化の追い風となっている。


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