「ICTスキルの向上だけでなく、様々な知識の修得を目指した取り組みです。そもそも情報技術は常に進化し続けるものなのですから、学校ではスキルよりも、活用する楽しさや喜びを体験させ、意欲を持たせることが重要だと思います」(傍花初等学校/ユ ファヨン校長)
同校では、自校のWebページ上に、教師が集めた社会科の授業の資料写真集を掲載したり、360もの童話を画像+音声化してストックするなど、データベースとしての活用にも力を入れている。
「ICTを使いさえすれば授業が良くなるというわけではもちろんありません。しかし、授業への興味を高め、情報化社会への適応力を育てていることは間違いないですね」(傍花初等学校/イ ブヨル先生)
自発的にスキルを獲得する生徒たち
様々な授業でのIT活用には、生徒にも教師にも一定のスキルが求められる。
韓国のIT教育の先進例として有名な中東(チュンドン)中学校では、ITの授業は週1時間のみ。ワープロソフトやプレゼンテーションソフト、CG(コンピュータ・グラフィックス)ソフトなどの活用方法を教える。
「本校では、それに加えて希望者を対象とした放課後補習を実施しています。民間の講座の3分の1の受講料、3か月約5万ウォン(約5000円)で参加できます」(中東中学校/ユン テイク校長)
ほとんどの生徒が一般の教師よりも高いスキルを持っているという同校。教師が生徒に質問することも多いという。
「生徒が自発的にどんどん学ぶのがICTの特徴です。しかし、教師の側も当然スキルの向上が必要です。そこで本校の教師は夏休みを返上して、ICT研修を受けることになるのです」(ユン テイク校長)
教師向けの教育サイトの充実も、教師のスキルの向上に貢献している。陽川(ヤンチョン)中学校のハム ヨンギ先生は韓国のIT教育の第一人者で、現在、10のサイトを運営している。
「Webでは、現場の先生が実際に授業での指導に使える資料をデータベース化して配布しています。インターネットなどの利用法について解説するページもあります。1コマの授業でどのようにICTを使うと学習効果が上がるのか、Web上でみんなで意見交換して考えています」(ハム ヨンギ先生)
IT活用に対しては、「生徒が静かにじっくりと考え、知識を深める機会がなくなる」という批判の声もある。手軽で便利な教育機器としてだけではなく、生徒の考える力を養うツールとしての活用が、韓国でも模索されている。
児童がアナウンサー、カメラマン、レポーター役を務めながら、ニュース形式で発表を行う社会科の授業。ビデオカメラやモニターも授業でしばしば活用される。(写真/傍花初等学校)
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高まる国際理解教育へのニーズ
小学校からの英語教育を開始した韓国。指導の方向性も従来の文法重視型の指導から、コミュニケーション重視型へと新課程を契機に移行している。韓国社会では、日常会話レベルの英語力が日本以上に求められているという。
私立の梨花女子大附属初等学校では、1年生から週1時間英語の授業を行う。早期からの英語教育の実施には保護者の期待もあるという。
中学校では、実際に外国の生徒との英語による交流が始まる。インターネットを用いてアメリカやイギリス、オーストラリア、そして日本の生徒とメール交換を行う学校は多い。梨花女子大師範大附属中学校では、修学旅行で日本から訪問する生徒との交流に取り組んできた。事前に生徒同士で文通を重ねて相互理解を図っておくなど、単発のイベントに終わらないように配慮してきたという。
梨花女子大附属初等学校の2年生の英語の授業。保護者が作成したイラストなどを用いながら、ゲーム感覚で進められる。
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