VIEW21 2001.12  新課程への助走
 週5日制に向けたカリキュラム編成の試み(3)

事例2

大阪府・明星高校の場合

 多くの私立高校が'02年度以降も週6日制の方針を打ち出す中、大阪府の明星高校はあえて週5日制へと移行し、土曜日を自由参加型の「土曜セミナー」の実施日に充てることを決断した。その改革の経緯とねらいについて伺った。


週5日制への移行は
私学にとっても学校改革のチャンス

 創立100年を超える伝統を誇る大阪府・明星高校は、毎年延べ700名以上が4年制大に合格する、府内でも有数の進学校である。だが、同校の進路指導部長の太田寛隆先生は、同校の現状に改革の必要性を感じていた。
 「問題を感じていたのは、現状のカリキュラムでは生徒一人ひとりの学力に応じた、きめ細かな指導が難しいという点でした。最近は生徒の学力も相当多様化しています。一斉授業の形態では、生徒一人ひとりのニーズにはなかなか対応できません。習熟度別のクラス編成を行おうとしても、クラス分けや教師の人員確保などの問題で難しいのが現状です。何らかの抜本的な対策が必要だと考えていました」
 一方、週5日制や新課程に向けた対応を協議していた同校の「2002年委員会」の上畑卓治先生も日々の授業の中で、現状のカリキュラムに問題を感じていた。
 「今の生徒はどんどん受け身になってきています。授業で分からないところが出てきても、なかなか手を挙げようとはしません。そうした生徒を、自発的な学びが行えるレベルまで導くためには、通常の授業とは別に、彼らが手を挙げやすい環境を整える必要があるのではないかと考えていました」
 こうした現状のカリキュラムに対する問題意識は、学校改革の議論として、週5日制への移行とセットで考えられるようになっていったのである。
 「本校では、今回の週5日制、新課程への移行といった一連の動きを、学校改革の大きなチャンスとして捉えています。大きな改革を行うにはそれなりのきっかけが必要ですが、今回の教育改革の動きは、改革を目指す私学にとっても格好の機会を与えてくれるものだと思います」(太田先生)
 そして同校は多くの私学が週6日制継続の方針を打ち出す中、あえて変革の道を選び、週5日制の導入を決断したのである。

週5日制を学力向上につなぐ「土曜セミナー」

 週5日制への移行に伴って、同校では「土曜セミナー」の開講が決定された。週5日制の導入によって空いた土曜日を活用し、学校を開放、自由参加型の講習を多数開講することが決まったのである。
 「『土曜セミナー』では、教科書に沿った通常の授業とは別に、大学入試を視野に入れた発展型の演習や、授業をよく理解できなかった生徒のための補習型の講習、あるいは文化教室型の講座など、多彩な講義を行う予定です。また、入学したばかりの1年生向けには、高校における勉強の仕方を学ばせるような初歩的な講習も用意する予定です。本校では長期休暇を短縮したり、定期考査後の休みを見直したりして、週5日制でも今までとほぼ変わらない授業時数を確保しています。ですから、『土曜セミナー』は、決して5日間で学び切れなかった学習内容に対する補習ではありません」(上畑先生)


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