上畑先生は、『土曜セミナー』を実施することによるメリットとして、次の二つのポイントを挙げた。
(1)教師のスキルアップが図れる
「『土曜セミナー』においては、生徒は基本的に自分が希望する教師の科目を自由に履修することができます。すなわちそれは、生徒によって教師が評価されることを意味します。生徒は普段の授業を見て評価するわけですから、我々教師も今まで以上に普段の授業に力を入れるようになるはずです。『土曜セミナー』の実施によって、通常の授業全体をレベルアップさせていくことが期待できるのです」
(2)生徒の主体的な学びの姿勢を養う
「『土曜セミナー』への参加については、完全に生徒の自由意志ですので、もちろん、参加しないという選択肢もあり得ます。参加を強制することは容易です。しかし、生徒が自分で判断し、自分の意志で参加することこそが重要なのです。ともすれば受け身になりがちな生徒が、『土曜セミナー』によって、改めて学ぶ意義を考え、自分に必要な科目を選び取ることは、主体性の育成、ひいては主体的な学びの姿勢を育成する上でも大きなプラスになると考えています」
大胆な改革の原動力は明確なSIの認識
これだけ大胆な改革がスムーズに実施されようとしている背景には、同校のSIに対する確固とした理解が、教師間で共有されていることが挙げられる。その事情について、馬込新吉副校長は次のように語る。
「実は、『2002年委員会』が発足し、週5日制に関する検討が始まった'98年は、ちょうど本校の創立100周年の年に当たっていました。そのため、本校では今までの100年を見直し、今後の100年を考えるという作業を、5年間をかけてその際に行っていたのです。そのため、SIは、改革に関する検討を始める前にほぼ固まっていましたので、今回のカリキュラム編成の際にSIに関する議論は大変スムーズに行うことができました」
そんな同校のSIを斎藤壮一教頭は次のようにまとめる。
「本校は、キリスト教の精神に基づくミッションスクールです。ミッション(Mission)とは『使命』という意味です。すなわち、その時代にふさわしい教育を行うことこそが本校の『使命』なのです。時代が新しい教育へと向かっているのなら、その流れに沿った教育を行い、人を育てることが本校のSIです」
『土曜セミナー』の実施に際しては、教師の人員確保やシラバスの作成、あるいは教材の購入費の問題など、解決すべき課題は少なくない。しかし、それでも同校の先生方は「新しい葡萄酒は新しい皮袋に」の精神で、極めて前向きに学校改革に取り組もうとしている。週5日制をどう捉えるかという問題に対し、同校の姿勢が示唆するところは大きい。
『土曜セミナー』実施に伴う主な検討課題
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- 土曜日に部活動を行いたい生徒に対し、『土曜セミナー』との間で二者択一を強要してしまう点をどう改善するのか
- 講座の実施に伴う費用をどう捻出するのか
- 『土曜セミナー』ために休日出勤した教師の手当てをどうするのか
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