事例3
東京都立新宿高校の場合
新宿高校は、'02年度から2学期制を、'03年度からは単位制(進学重視型)を導入する。だが、これらの大胆な改革は、直接的に週5日制、新課程への対応を意識したものではないという。その背景についてお話を伺った。
学校の将来像を見据え 大局的な観点から改革を決意
新宿高校の改革の経緯を、同校の戸塚文彦先生は「本校が単位制に移行するのは、週5日制や新課程といった個々の問題に対処するためではありません。あくまでも本校の将来像を見据えた、本校独自の改革なのです」と断言する。
実際、新宿高校が都教委の打診を受けて、単位制導入に向けた検討を始めたのは'98年のこと。全国に先駆け、いち早く変革の道を選んだ理由を、小栗洋校長は次のように語る。
「背景にあったのは、都立高校を取り巻く厳しい現状です。実際、都教委が実施した『都立高校に関する都民意識調査』によれば、大学進学に関し、『私立高校よりも都立高校の方が良い』と考える人の割合はわずか2.9%に過ぎませんでした。旧制中学以来の伝統を持つ本校も、そうした状況は危機感を持って受け止めており、『何らかの改革が必要だ』との認識は以前から高まっていました。ですから、都教委からの打診についても、積極的に検討に入ることができたのです」
「進学重視」に果たす単位制導入のメリットとは?
都教委から受けた打診の内容は同校に「進学を重視した単位制高校」のモデルケースとしての取り組みを求めるものであった。だが、単位制高校と言えば、生徒の進路選択の多様化への対応や、科目履修の柔軟化を目的に設置されることが一般的である。それだけに、「進学重視」という目標に的を絞った都教委の打診は、ややもすれば奇異に映るかもしれない。
しかし、小栗校長は、「単位制の特色をうまく活用すれば、進学重視という目標に対して、他の高校以上に充実した指導が行える可能性があると考えました」と語る。小栗校長は単位制の導入によって得られるメリットを次のように整理した。
(1)生徒の学力に応じたきめ細かな授業が可能
単位制高校の大きな特徴の一つとして、他の高校に比べて、授業の内容設定をより自由に行えることが挙げられる。
「この点は、習熟度別の授業を行う際に、大きなメリットとなります。現在、本校では、国、数、英、物理の科目で習熟度別のクラス分けを行っていますが、単位制を導入すれば、より多くの科目で習熟度別授業が行えます。また、履修年次も学年枠に捉われずに設定できますから、生徒は自分の学力に応じて柔軟に授業を履修できます」
(2)小人数教育の実現
一方、単位制高校は、他の高校に比べて教員数を多く確保できるという特色も持っている。
「教員数を多く確保することで、従来は難しかった小人数教育の推進が可能です。また、習熟度別の授業を行おうとする際、各科目とも、これまで以上に多くの講座を開講することが可能です。ですから、その点についても、単位制への移行は大きな強みになるのです」
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