VIEW21 2001.12  指導変革の軌跡 千葉県立成東高校

 また、大学の講義にふさわしいノートの取り方を今年は重視した。実際の講義に入る直前に行われた全体会でも後藤先生は、「大学の先生の授業では、自分で考えながらノートにメモを取らないといけません」と生徒たちに呼びかけた。生徒たちは小中学校や塾などを通じて、そのまま写せばきれいなノートが完成するような丁寧な板書に慣れている。だが大学教員は、重要事項を口頭での説明で済ませることが少なくない。また覚えることよりも考えさせるタイプの講義が多く、自分なりの視点で論点を整理しないとノートは作成できない。
 講義終了後、生徒たちのノートはすぐに回収された。そして教師の手によって、1講座1ノートずつ“優秀作品”を選定する作業が行われた。久永洋司先生は、いくつかのノートに目を通し、「一人ひとりが考えてノートづくりをしたから、それぞれ違うノートができあがっているな」と感じた。
 「ノートづくりも高校と大学では大きく違いますから、生徒は大変だったでしょうね。ただ、そんな中でも、適宜自分の考えを書き入れたり、板書にとらわれない整理の仕方をするなど、生徒それぞれの工夫の跡が見えました。優れたノートと感想文は、1冊にまとめて報告書にします。昨年はクラスに1部ずつしか配付できませんでしたが、今年は生徒全員に配る予定です。生徒にそれを読ませることで、『ノートはこうやって書けばいいのか』とか『同じ講座を受けたのに、感じ方が全然違うな』というふうに、もう一度考えるきっかけになることを狙っています」

「大学に生徒を
送り込むだけの指導はしたくない」と後藤先生は語る。「大学入学後、あるいは社会に出てから、自分で考え、行動できる人間を育てたい」と。それは結果的には、近年導入する大学が増えている小論文試験や面接、AO入試に対応する能力を付けることにもつながる。そのための同校の具体的取り組みは、実は「学部・学科ガイダンス」だけではない。
 「統一テーマ討論」が同校でスタートしたのは、'95年度にまで遡る。これは学年で統一のテーマを定め、LHRを使ってクラスで討論会を行うというもの。各学期に1回ずつ実施され、生徒は卒業までに計8回もの「統一テーマ討論」を経験する。個々の生徒の“考える力”を、集団での活動によって深めていくのがねらいだ。

まだある参考にしたい取り組み
課題研究
'97年度より、理数科の3年生を対象に、「課題研究」を行っている。4~5名のグループを組んで、自ら課題を設定し、実験や調査を通じて課題を検証し、結果を論文にまとめ、人前でも発表する。今年度からはその対象を普通科の理系選択の生徒にまで広げた。将来的には、文系の生徒に対しても実施する構想もある。

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