VIEW21 2001.12  指導変革の軌跡 千葉県立成東高校

 テーマは1年生が「学ぶこと」、2年生が「働くこと」、3年生が「生きること」に設定されており、さらに細かいテーマについては、教師の案と生徒の意見を摺り合わせながら決めていく。例えば2年生なら「男は仕事で、女は家庭か」、「仕事はお金か、それとも達成感か」といったテーマで、これまで話し合いが行われてきた。従来の進路指導は、どの職業を選ぶのか、どの学部・学科を選ぶのかといった“選択”にどうしても偏りがちだった。だが「統一テーマ討論」では、「なぜ学ぶのか」「なぜ働くのか」という根本的な問いにまで及んでいるのが特徴だ。討論の形式は毎回異なるが、まだ話し合いに慣れていない1年生はディベートのようなゲーム性の高いものが多く、一方、3年生は本音を自由に語ることのできるフリートーク形式が選ばれることが多いという。
 「統一テーマ討論」の確立期に当たる'97年から'99年にかけて、中心的に指導に当たった立川目育治先生は「この取り組みは、担任の存在が重要だと考えていた」と言う。
 「議論が煮詰まったときに、担任が的確な問題提起ができるか、終了後にアドバイスができるかといったことは、かなり大きいですよね。始めたばかりの頃はこういった取り組みに慣れていないせいか、戸惑っている先生が何人かいらっしゃいました。そこで『統一テーマ討論』に関する先生向けのプリントを作成するなど、意識の共有化を図りました」
 当初、「統一テーマ討論」は進路部が主導となり学年団を引っ張っていく形で行われた。だがノウハウが各教師に浸透し、取り組みの全体化が実現した現在は、進路部から学年団主導に移行している。
 そしてもう一つのポイントは、言うまでもなく主人公である生徒を、いかに主体的にかかわらせていくかにある。
 「統一テーマ討論」の1か月前になると、クラスから選出されたロングホームルーム運営委員による委員会が週1回のペースで開かれ、テーマ設定や資料の作成などの準備が進められる。まだ慣れていない1年生にはブレーン・ストーミングなどの討議の方法や、討論を盛り上げる司会の進め方などの運営方法を徹底的にレクチャーしていく。そして彼らはクラスに戻ると、「統一テーマ討論」の意義を生徒たちに訴える役割を担う。「ロングホームルーム運営委員の人数は各クラス2~4名。クラスによっては6名出すところもあります。それに当日の司会進行役や書記が加わる。さらにクラスの進路委員も協力する。中心になって活動するメンバーが多いほど、たくさんの生徒を取り組みへと巻き込んでいけますからね」(後藤先生)
 3年間の取り組みの中で、目覚ましい成長が感じられる生徒もいるという。司会を任されても、最初は議事進行で精一杯だった生徒が、3年生にもなると、参加者から発言を上手に引き出すなどの技量を駆使できるようになる。
 「自分で考える力」は、数値になっては表れにくい。だが後藤先生は「これらの取り組みによって、うちの生徒の資質は確実に開花していると思う」と言う。その成果は、彼らが大学や実社会のフィールドに飛び出したときに、確かな形になって表れることだろう。

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今年で7回目を迎える「統一テーマ討論」は、「自ら考える」生徒を育成する同校の中心的な取り組みである。ロングホームルーム運営委員を中心に準備が進められる。



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