学習行動と評価活動 先に、学習を持続するためには対処性の育成が必要なことを指摘したが、この課題に応えるためには学習行動に対する評価活動が重要な意味を持つ。宿題を与えれば誘因効果によって学習行動に結び付くのだから多く与えれば良いというわけではない。学びから脱落しやすい中・下位の生徒にとってはかえって脱落を助長することもあり得る。
どんな宿題をいつ頃、どんな形で準備するかは授業の目標・内容や評価の方法を含むシラバスの作成を前提としなければ計画的に準備することは難しい。
第5の要件となる学習評価は学力テストだと短絡的に捉えず、発表(表出)活動―獲得した知識などをアウト・プットする場面として捉えたい。生徒にとって発表してみて友達や教師から「褒められる」(評価される)ことは自己効力感(自分も捨てたものではないと思う)、ひいては自己肯定(受容)につながるので学力向上に結び付きやすい。教科学力としての知識や理解力・読解力などの学力要件をテストで計測することは「結果としての学力」を数量化し、どのレベルに到達したかを確認させ、志望大学のレベルとの格差をチェックさせることになる。しかし、「つまずいた問い」がどんな領域や要件なのかを確認させ、失敗原因を活かす=教訓帰納=ためのアドバイスがなければ、インセンティブを発揮させることにはならないのである。
評価活動は、学習動機の構造から見ると自尊志向(プライド・競争心)と訓練志向(知力を鍛える)にとって有効に働かなければ機能しているとは言えない。自尊志向を強化してやることは担任の重要な役割で生徒の学習成果を認め「褒めモード」で接触し、友達同士で自尊志向を高め合うグループ学習を展開することは日常的に表出活動を伴っているため、自己効力感を高める「場」として機能させると特に有効なのである。
3 学習態度と自宅学習
望ましい授業態度として「しっかり聞きノートなどに書き込む」、望ましくないケースとして「授業を聞くより写す方に集中していたり、授業に集中できない」という項目を取り上げ、3教科について学力レベル別に整理した図10によると次の5点を指摘することができよう。
(ア)
どの教科も学力E→Aレベルに向けて左上の方向に動いており学力レベルと学習態度の相関が認められる。
(イ)
望ましいベクトルを描いているのは3年生の英語であるが、2年生の国語・数学も勾配がやや緩かとなるが同じ動きを示している
(ウ)
2年生の英語はD~Aレベルで望ましい学習態度は増えず、生徒が授業に積極的にコミットしていないようである。3年生の国語・数学のC~Aレベルでも増減率に差はあるものの同じ動きを示している。(イ)のパターンに比べてきちんと授業を聞けば学力向上が期待できるとか、知的好奇心を誘発されると思わない生徒が多くなっている。
(エ)
2年生と3年生を比較してみると、国語はほとんど動かず学力レベル間格差が縮小して平準化が進むのに対し、数学は3年生がすべてのレベルで良くなっているもののレベル間格差は拡大している。英語は3年生で上位層が授業に積極的にコミットし、平準化を伴いながら望ましい方向にシフトしている。
(オ)
このような授業態度は「結果としての学力」に反映され、英語は旧課程のレベルをわずかながら上回っている。これに対し数学・国語はAレベルで変化はないもののD・Eレベルでかなり大きな学力低下が認められたことと対応している。
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