VIEW21 2002.2  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 新入生対象の学習指導

■part 5■ 勉強を妨げる要因
部活動と学習の相乗効果をねらう

 高校という新しい環境に飛び込めば、どの生徒にも悩みや迷いが生まれる。それが学習を妨げる要因となることもある。
 部活動(特に運動部)と学習の両立は、最も普遍的な命題の一つだろう。身体は中学生レベルなのに上級生並みのハードなトレーニングを課せられれば、家に帰って勉強する気力も体力もなくなってしまう。家庭学習の重要性は認識しつつも、毎日の行動が伴わず、結果的に焦りが生まれる。このような悩みを持つ生徒に対しては、1学期が終わる頃にはある程度慣れることを伝え、不安を軽減させる。言うまでもなく、身体・頭脳・心のバランスは重要で、部活動と学習の相乗効果は大きい。部活動によって勉強時間が減るのは事実だが、効率的で密度の濃い家庭学習を実現させることで、学習時間の減少分を補うことは十分に可能であることを生徒に伝える。必要に応じて部活動の顧問とも連携し、最適な学習環境づくりに取り組みたい。
 クラスの雰囲気に馴染めないなど、人間関係も悩みの一つとして浮上してくる。HR、授業、掃除の時間などを通して生徒の様子に注意を払い、クラスでの人間関係に悩む生徒をできるだけ早期に発見し、個別に面談するなど適切に対応する。
 新しい環境に慣れてくると、次第に学習、生活の両面に怠け心が生まれてくることもある。その時期は生徒によって異なるが、5月の連休明けは一つの山だ。連休中に規則正しい生活が送れるように、学習課題を出すなど対策を講じたい。この時点での緩みを放置すると、あとあとまで引きずる恐れがある。

■part 6■ 夏休みまでの授業のポイント

 言うまでもなく、トータルな人間形成にはなるべく多様な教科を学習させることが重要である。学校全体、学年全体として各教科の役割は何か、何を身に付けさせるのかを大局的な視点で問い直し、1年生の指導方針について考える必要があるだろう。ここでは国語・数学・英語の3教科を例に、1年生の4月から夏休みまでの指導で特に注意すべき点を考えてみたい。

国 語
すべての教科の根底にある力を育む

 最近、多くの教師が、生徒の読解力の低下を指摘する。英文の和訳が日本語になっていない、文章問題の文意が読み取れないなどの例は、多くの教師が直面している悩みだろう。
 我々は日本語でものを考え、日本語で表現する。思考、表現の源である国語の学力は他教科・科目への影響も大きい。
 数学や英語と国語の一番の違いは、数学や英語ができる生徒は多くの場合、家庭学習もきちんとこなしているのに対して、国語、特に現代文の場合、成績上位層の生徒が必ずしも国語を家で勉強しているとは限らない点だ。「国語は家庭で勉強しなくても大丈夫」という誤った意識を新入生に持たせないように、予習・復習が求められる授業を行っているか、折に触れて見直していきたい。「高校の国語の授業は予習・復習が必要なんだ」と生徒に思わせる仕掛けを1学期中に取り入れることが求められる。
 教科書に沿った予習・復習、さらに読書など、生徒の日々の努力に目配りし、評価する授業を実現したい。


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