VIEW21 2002.2  指導変革の軌跡 長崎県立島原高校

同校で
「導入期の指導計画検討委員会」が設置されたのは、'97年11月。中学校の教師による“3段の段差”発言があった約5か月後のことだ。発案者は寺田前校長自身。メンバーは各学年団と各分掌から計10名が選出された。副委員長となった木村先生は「導入期とは1年次、中でも高校入学時からの3か月間を指します。私たちはこの3か月間を、生徒を中学生から高校生へと飛躍させる勝負の時期と捉えました。この期間に学習習慣や生活習慣の形成をしておけば、生徒たちは夏休みやその後の学校生活も有意義に乗り切ることができます。夏休み後になってから生徒たちを変えるには、数倍のエネルギーを要しますからね」と語る。
 導入期の指導を行う上で土台となる「目的」と七つの「指導目標」については、あらかじめ校長から提示があった。そこで委員会では2人1組でチームをつくり、各指導目標ごとに具体的な指導案を作成した。従来実施してきた各行事を再検討し、さらに雲仙合宿研修や通学時のマナー指導など、生徒の現状に対応するための新たな試みを加え入れた。これまでも1年生の学年団や各分掌では、導入期に様々な行事を行ってきていたが、体系化ができていなかった。指導計画が体系化されたことで、各々の取り組みの全体の中での役割が明確になったわけだ。
 「計画を策定するときに役立ったのは、当時の1学年主任が毎日つくっていた教師間の連絡用プリントです。学年運営上の課題や、それに対してクラスや学年で対処すべきことが細かく記されていたので、計画を立てる上で非常に参考になりました」(木村先生)
 中高の連携というと、普通は学習面ばかり重視しがちだが、同校で特徴的なのは、「品位ある生活態度」や「通学時のマナー」など、高校生活全般に目が向いていることだ。
 「本校の生徒たちは、将来は社会でリーダーとしての役割を担うことが期待されています。周囲から信頼される人物になるためには、相応の品格が求められます。生活面においても、早い段階で生徒を中学生から高校生へと脱皮させることが必要なのです」(木村先生)
 「導入期の指導計画検討委員会」は'98年3月に最終計画案を作成。職員会議で了承を得た。そして島原高校の「導入期の指導計画」は'98年度よりスタートしたのである。

導入期の指導計画体系(抜粋)
目的
高等学校入学時点から1学期間は、3年間の高校生活の在り方を左右する最も重要な時期である。この時期に、早期にかつ円滑に島原高等学校生としての望ましい生活習慣と学習習慣を身に付けさせるため、体系的組織的に学校を挙げて指導に取り組む。2学期以降もその成果を継承し、指導体系の充実を図る。
1
 目標
島高生としての品位ある生活態度を身に付けさせる
 指導計画
●品位ある生活態度の育成
・服装・容儀など生徒心得に対する理解の徹底
・雲仙合宿研修における実地指導
・部活動遠征等学校外活動での指導
等全7項目
2
 目標
通学時のマナーや清掃などを通じて島高生の公共心を高めさせる
 指導計画
●通学時のマナーと清掃活動の徹底
・登校実地指導
・清掃に関する活動内容や意義指導 ・森岳城清掃
等全9項目
3
 目標
高等学校の授業の速度と難度に早期に円滑に適応させる
 指導計画
●教科指導の内容と方法の改善
・基礎学力の定着度の分析と指導
・雲仙合宿研修における学習指導
・中だるみの指導
等全15項目
4
 目標
最低3時間の家庭学習の習慣を身に付けさせる
 指導計画
●家庭学習習慣の形成
・各教科・科目での家庭学習法の指導
・家庭学習計画の作成と 実施状況の確認
・考査前1週間の学習指導
等全7項目
5
 目標
進路についての自覚を深めさせ、早期の目標設定に役立てる
 指導計画
●進路意識の高揚
・進路希望調査と進路情報の提供
・小論文指導を中心とした進路意識の啓発
・早朝読書
等全8項目
6
 目標
学級担任と生徒、生徒同士の相互理解を深め、学級の和を醸成する
 指導計画
●担任の生徒理解と学級の和の形成
・LHRを通しての生徒同士相互理解
・生徒理解のための個人面談の実施
・中学校訪問
等全7項目
7
 目標
学業と部活動を両立させ、積極的に部活動に参加させる
 指導計画
●部活動の活性化
・部活動の意義の理解と意識の高揚
・部活動支援活動
・保護者への協力要請
等全7項目

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