VIEW21 2002.2  特集 「教育新世紀」に向けた学校改革

「文章の読み方」から指導が必要(国語)

小池 国語担当の立場から言わせていただきますと、読解力の低下という問題が最も大きな変化ではないかと思います。実際、調査結果(本誌、12月号巻頭特集『高校生の学力と学習行動成立の要件』参照)などを見ても、読解問題の出来が非常に悪くなってきています。その原因の一端は「とりあえず成績を上げるなら古文・漢文指導」と、現代文の指導を後回しにしてきたことにもあると思います。しかし、それ以上に、学校における「国語」の授業そのものにも問題があるという気がします。
 高校入学後、そろそろ1年も過ぎようかとした頃、ある男子生徒が私の所に来て言いました。「先生、中学までは国語の授業は道徳の授業みたいなものだと思っていました。『きみの言っていることはこの文脈からは絶対に出てこない』なんて理詰めで指摘を受けたのは今日が初めてです」と。恐らくその生徒は「きみの言うことももっともだね」と、受容一辺倒の授業を受けてきたのではないかと思います。しかし、そういう授業では、シビアに文章を読み込む訓練は積めません。読解力の養成には、例えば接続詞をきっちり読むとか、あるいは、文章の構成をしっかり考えながら内容を押さえていくとか、地道な指導を一から行わないことにはどうにもならないと思います。
 また、読解力を養う前提として語彙力を付けることがどうしても必要ですが、私の実感としては語彙力も非常に低下してきていると思います。「この言い回しは当然分かるだろう」と思って話したことが生徒に通じないケースが往々にしてあります。直接的には読書の機会が減少していることがその原因だと考えられますので、本校では『朝の読書』の時間を設定するなどして、語彙力の低下に歯止めをかけようとしています。

文法の体系的な理解がより重要に(英語)

水野 英語について言えばポイントは二つあると思います。一つは、オーラルコミュニケーション(以下OC)能力の育成を、どのようにしてリーディング能力やライティング能力の育成に結び付けるのかという点。そしてもう一つは「文法」という科目がなくなった中で、どのようにして文法力を身に付けさせるのかという点です。
 現行課程からOCが科目として認定されましたが、実際のところ、OCに真面目に取り組んでいる学校ばかりではないと思います。しかし、リスニング能力とリーディング・ライティング能力には密接な関係がありますから、OCをしっかりと指導の中に位置付けていかないことには、学力を向上させていくことは難しいはずです。本校では現行課程が始まる以前から、定期考査にNHKの『ラジオ英会話』を取り入れるなどしてOCの指導に取り組んできましたが、その際に重視したのは、「せっかくOCをやる以上は、予習・復習をして初めて理解できるレベルで実施しよう」ということでした。OCというと「聞いて楽しい」というレベルで終わってしまいがちなのですが、それでは学力の向上につながりません。その先を考えるならば、やはりリーディングやライティングと同じように、「予習-授業-復習」という流れが成立するOCにしなければならないでしょう。
 一方、OC重視によって、学習指導要領から消えてしまった「文法」については、こんなことを言うと、時代に逆行しているように思われてしまいますが、私は文法の重要性は以前と全く変わらないと思っています。文法は、英語を難しくするためではなく、英語の理解を助けるための知識なのです。実際、私の経験で言えば、中学で「聞く」「話す」という方法で学んだ知識を、文法的に体系化できなかった生徒は、センター試験はどうにかなっても、読解問題でも本格的な文法知識が問われる個別試験になると途端にダメになってしまうようです。科目としての「文法」がなくなったからこそ、体系的な文法教育を行う重要性は以前にも増して高まっていると思います。
 最後に予習をしてこない生徒が増えているという問題ですが、その一因として電子辞書の存在も大きいようです。実は、生徒の学力と電子辞書の利用との相関を調べてみたことがあるのですが、やはり、学力の低い生徒ほど使っているという実態が明らかになりました。辞書が使えないということは、「予習の仕方が分からない」ということですから、主体的な学習姿勢を養う意味で、今後は1年次での辞書指導の徹底がより一層大きな課題になるでしょう。


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