VIEW21 2002.2  特集 「教育新世紀」に向けた学校改革

土曜日の扱いをどうするのか?

 今「ゆとり」という言葉が出ましたが、土曜日の扱いをどうするかということが、各校の大きな関心事になっています。例えば、生徒や保護者の方から「土曜日に自習室として学校を開放してほしい」といった要望が出た場合、学校としてはどのように考えればよいのでしょうか?

布村 完全学校週5日制導入の根底には、今の子どもたちには、自然体験や、人間的な関係を結ぶ社会経験が十分ではないとの分析に基づき、家庭や地域において様々な体験を積んでほしいという考えがあります。ですから、学校の正規のカリキュラムを土曜日に位置付けるべきではないと思います。
 ただ、完全学校週5日制の趣旨を踏まえつつ、月曜から金曜の授業の枠内では、ある生徒に対してどうしても基礎を教えることが不十分であるという場合、あるいは大学や企業と連携しながら、生徒の興味・関心などに応じてより高い課題を与えたいなどという場合に、生徒や保護者の希望に応じて、授業とは違う方法で個々の学校や生徒の実態に応じた自主的な活用は考えられると思います。また、私立学校は独自の建学の精神があるため、休業日を国で一律に定めるのは困難です。しかし、私立も公立も公教育であり、学習指導要領に基づいて教育を行っている点については変わりがありません。

水野 やはり、公立と私立で土俵が変わってしまうのはあまり好ましくないと思います。公立は色々な縛りの中で工夫してやっているわけですから。
 本校では週5日制の導入によって、生徒の学習意欲が低下してしまうことを一番危惧しています。本当は生徒個々人が自律的な学習をしてくれればいいわけですが、実際には、週末課題や週末読書など、何らかのインセンティブがないと難しいのが現状です。どの学校も実情に応じて、週5日制に対応するために、何かしら工夫しなければならない部分があると思います。その意味で一般論として、土曜日も授業ではないにせよ、ある程度、自主性に任せてほしいという学校は多いと思いますね。

「時間の論理」だけでカリキュラムを編成してよいのか

 自主性ということですと、'03年度からは各教科の時間などもかなり弾力的な設定が可能になりますが、それについてはどのようにお考えでしょうか?

石川 本校では試験終了後や、入試直前期になりますと、通常の時間割の枠を全く崩して時間割を再編成しています。その際には、各教科から「うちは何分欲しい」という要望が出てくることも結構ありまして、そうした意味で、'03年度カリキュラムの編成に向けたテストケースとして機能していると言えますね。数学の場合、思考力を使う問題を扱うために110分授業を行ったりしていますが、3年生ともなれば集中力も続きますから、授業は相当盛り上がります。と言っても、110分をスタンダードにするというのは難しいと思いますが。

水野 カリキュラムを編成するときには「時間の論理」というのがやっぱり無視できなくて、学校によっては、時間数さえ確保できればいいという発想でかなり変則的なカリキュラムを組むところもあるように聞いています。
 しかし、私はそうした「時間の論理」だけで本当によいのか疑問に思います。生徒の集中力、記憶力なども考慮して、生徒にとって何が最適なカリキュラムなのかを考えていくべきでしょう。

高田 本来、カリキュラム編成に当たっては、「この教科なら何分の授業時間が、自校の生徒にとって最も適切なのか」というところから検討すべきなのかもしれませんね。各教科で教える内容をしっかり考え直すところから検討がスタートすれば、カリキュラム編成を授業内容の改善につなげていくことができるのではないでしょうか。

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