この改革の目玉となる
「入試に焦点を合わせた授業が生徒の人間的総合力育成につながる」という理念は、実はすでに実績を上げていた同校の教師の実践を分析することから得られたものであった。世界史を担当する大竹先生の実践もその一つだ。
「私はまず、模擬試験などで問題が解け、点数が取れることの楽しさを生徒に味わってもらいたいと考えました。試験の得点を上げるためには教科書の授業をなるべく早く終え、問題演習を徹底させることが大切です。そのために、世界史担当の私以外の先生との協力体制は不可欠でした」と大竹先生は語る。世界史では、1学年につき3人の教師が授業を担当している。「全クラス揃ってハイペースな授業を展開するには、各クラスの授業内容の均質化が必要」と考えた大竹先生は、各単元の指導に入る前に、入試問題をベースとした定期考査問題を準備することを提案した。
「定期考査問題を指導前につくることによって、今まで以上にポイントが絞られた授業を行うことができると同時に、3人の教師が同じ内容の授業を行うことができるようになるのです」(大竹先生)
また、授業の進度が速い分、試験範囲も広くなるため、定期考査直前には生徒を体育館に集め、ポイント講習会を開いた。試験前は部活動も休みに入り、生徒の学習意欲がピークに達する時期である。「この時期のポイント講習会は効果が高かったですね。生徒の集中力が増しているので、吸収率も相当なものでした」と大竹先生が語るように、徐々に生徒の成績は上昇し、全国模試でもトップクラスを維持できるようになった。さらに得点の向上は、生徒の学びの姿勢そのものにも良い影響を与えた。
「得点の向上によって生徒は世界史に自信を持ち、日常会話にも『社会主義の崩壊』『資本主義の構造的矛盾』などの用語が飛び出すようになったのです」(大竹先生)
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