VIEW21 2002.4  創造する 総合的な学習の時間

本格的なスタートを迎え体制を一新

 99年度の取り組みを踏まえて、いよいよ00年度から「さくらプラン」は、1学年、2学年の両学年を対象に本格的なスタートを切った。これを受け、各学年の担任団を縦断する形で「研修推進部会(『さくら部会』)」が設けられ、2・3学年を巻き込んだ全校的な取り組みとするための布石が打たれた。同部会の構成メンバーは研修部の教師や研究主任(研修部主任が兼任)、各学年主任。学年進行というスタイルながら、タテの学年間の情報交換を容易にするための組織編成であった。
 そして、年度途中の2学期からは研究を実践していくため、火曜日の7限に「総合学習」の枠が設定された。「さくら部会」では、「さくらプラン」の経験を活かしつつ、「総合学習」に取り組む方法について検討が開始された。
 「『さくらプラン』は本校独自の取り組みとして継続して、その中で『総合学習』の趣旨に合った活動を抽出し、『総合学習』の枠内で実施するという方針がまず確認されました。そして、次に考えねばならなかったのは、『さくらプラン』に含まれるどの要素を『総合学習』として捉え、深化させるべきかということでした。この区分を曖昧にしてしまうと、授業の性格付けがはっきりせず、結果的に内容のある授業ができなくなると考えたのです」(福田浩一郎先生)
 そんな中で「さくら部会」が着目したのが、現在の「さくらプラン」を支える5つの柱の一つ、「自己発信」というキーワードだった。
 「自分の考えをまとめ、正確に相手に伝える『自己発信』力を養うには、意見の裏付けとなる情報を集める能力や、それを整理する能力、さらにそれらを分かりやすく表現する能力など、多様な力が必要とされます。『知の体系化』を謳う『総合学習』の理念に照らしたとき、『自己発信』というキーワードが非常に重要になると考えました」(福田孝義先生)
 実は、この検討を行うまでは、「さくらプラン」の中に「自己発信」という要素は盛り込まれていなかった。「総合学習」の導入と、その在り方をめぐる議論の中で、母体となった「さくらプラン」そのものの在り方に関する議論もまた深まっていったのである。

全教師の主体的な参加を生み出すために
系統班編成を活用

 「自己発信」というキーワードに照らし、同校では小論文指導とディベート指導を「総合学習」の中心に据え、「さくらプラン」の一部として実施している。
 「従来も小論文指導は行っていましたが、あくまでも大学入試間際だけのもので、年間を通じた指導経験を持つ教師は校内に皆無でした。また、ディベートについても状況は似たようなもので、指導ノウハウをどのように確立するかが課題となりました」(福田孝義先生)
 そこで考案されたのが、99年度に職業・学問研究を実施して以来、「さくらプラン」に取り入れられていた系統班別活動の導入だった。
 「特に小論文指導の場合、クラス担任が自分の専門外のテーマの論文を多数添削することは、現実的にかなり厳しいものがあります。そこで、小論文指導がある程度進んできたら、一旦クラスを解体し、『文学』『工学』『医療』などの系統班別に指導を行うこととし、各班の指導担当も専任化しました。これにより教師の負担が軽減できますし、一つの学問系統を継続的に指導することにより、教師一人ひとりがある程度の専門的な指導スキルを蓄積できるようになりました」(福田孝義先生)


<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.