センター試験5教科7科目実施の影響
国立大学協会の第二常置委員会が「国立大の一般入試は04年度以降、大学入試センター試験で5教科7科目を課すべき」とする見解をまとめたのが00年9月であった。これは89年まで実施された共通一次試験への回帰だと言えよう。この背景には学生の学力低下問題―レディネス(準備)のできていない学生の増加―に対する大学人の危機感がある。しかし、03年度からの新学習指導要領の実施という課題に直面していた高校現場では、02年度からの完全学校週5日制に伴う授業時間数の削減と絡んで、新カリキュラム編成上の大きな課題として受け止められた。現在、04年度入試におけるセンター試験5教科7科目実施は当初の基本方針であった標準型(理科と地歴・公民からそれぞれ2科目)ではなく、変則型(数学を2科目と数え、理系志望者は地歴・公民から1科目、文系志望者は理科から1科目)が主流となりつつある。これを受けて、変則型ならばカリキュラム編成上の対応はなんとか可能であるとする学校が多いが、同時に検討が行われていた医学部などの理科3科目実施に関しては物理的に不可能であるとの声が強い。
週5日制における授業時間数確保の工夫
「少ない授業時間数、少ない内容」そして「選択学習の増加」という言葉で新学習指導要領の特徴が語られるケースが多いが、高校現場での対応はどのようになっているのか概括的に整理しておきたい。95年度に隔週で土曜日が休日になった時、週34コマ×50分が、32コマ×50分に減ることに対して、以下のような工夫により週6日とほとんど変わらない授業時間数と授業内容が確保された。
(1)1日50分×6コマを65分×5コマにすることによって、1日25分、週125分(2・5コマ分)の授業時間増を確保する。
(2)1日50分×6コマに加えて週2コマの「ぶら下がり(とびだし)」を行うことで、週34コマを維持する。
(3)3学期制を2学期制に切り替え、授業日数を年間5・5日(約33コマ)増やす。
02年度からの完全学校週5日制への対応も、「現状の授業時間数を確保する」ことを前提に検討されているという点で、隔週5日制の導入時と共通しているように思われる。多くの高校では授業時間設定などの工夫、例えば、1日45分×7コマ(週1575分)、55分×6コマ(週1650分)、65分×5コマ(週1625分)などにより、01年度までの50分×週32コマ(週1600分)前後の授業時間数の確保が行われている。しかし、03年度からの新課程では「総合的な学習の時間」や教科「情報」などが新たに始まるため、これまでの授業時間を確保するために、「ぶら下がり」の時間を検討している学校が多い。その授業時間の内訳は国語・数学・英語の3教科で50%、理科・地歴・公民を加えた5教科で75%とする教科カリキュラム構成が平均的に構想されているが、難関大学進学志望者の多い進学校は、その割合がやや高くなるようである。(資料1参照)。
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