VIEW21 2002.4  特集 必要とされる「総合人間力の育成」の視点

Theme 2
目的追求型と課題解決型の学習の結合

 03年度新課程には「全員が共通して学ぶ部分を減らして、自由選択科目を増やす」という基本方針がある。生徒が本当に自分の将来の目標(なりたい自分)を定め、自分の適性や進路に応じて、学びたい教科・科目が選択できるのであれば、この考え方は学習行動に結び付きやすく、学力向上が十分期待できる。しかし、主体的な選択が十分にできない生徒に「拒む自由」や「捨てる自由」を与えることになれば、かえって「学び」からの脱落を助長する危険性を内包していると言える。

単なる知識の伝達と取得を拒否する生徒たち

 これまで学校で行われてきた学習は「目標追求型」の学びで、「1問1解」を原則とするのものが中心であった。文部科学省が02年1月に発信した「学びのすすめ」には、補充学習・宿題・課題にかかわる家庭学習は、このタイプの学習をさらに充実させてほしいとする願いが込められている。しかし、最近の生徒が求めている「学び」は、「社会の中で自分はどう生きるべきか」といった意味不安の解決にかかわる「課題解決型」の学習である。「課題解決型」の学習は「1問多解」であるが故に、解決するプロセスで働く学力、つまり思考力・表現力の育成につながるのである。本来、このような「自分の世界を広げるための学習」は、家庭や地域社会の中での体験やロール・モデルから学んできたのであるが、これらのインセンティブが期待できにくくなったからこそ、学校教育の中に取り込まざるを得なくなったのである。
 例えば、「読書」について考えてみると、人間が実際に自分の目で見ることができる世界は狭い。「狭い」範囲だけで考えていると、「狭い」考えが確信になってしまう。「文字」は映像に比べて、類推力や想像力が働きやすく、他者の視点で物事を見たり考えたりすることによって、自分以外の世界や価値観に接する事ができる。読書体験を通して、「自分の世界」の広がりが実感できれば、生徒自身が目標追求型の教科学習の必要性を納得し、「学び」に向かいやすくなるのである。
 本来、学習意欲を高めるためには、「学ぶ」面白さを生徒自身が実感することが正攻法である。しかし、ベネッセ教育研究所が01年に実施した調査によると「好きになれない科目はない」と回答した中学2年生は、96年の32%から27%に、また、高校2年生は90年の44%から39%へと減少している。生徒は単なる知識の伝達と取得を柱とした「目標追求型学習」を拒否する傾向が強い。その反面、観察や調べ学習、さらには表出活動についてはこれを肯定し、生き生きと積極的に活動していることも、また、現実の姿なのである。
 「目標追求型」の学習で最低限クリアしなくてはならないのは、それぞれの学校にとっての基礎・基本、そして授業にコミット(参加)できる生徒を低学年時にどう育てるかということであり、これが克服されないと、宿題や補充学習に対する生徒の反応は鈍く、学習効果を高めることは困難なのである。


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