Theme 3 総合カリキュラム編成の構想
各校のカリキュラムはそれぞれの学校の教育理念や教育目標を具体化したものであるが、その実施に当たっては、生徒の実態に応じて弾力的に運用してよいとされる。したがって、カリキュラムの編成に当たっては、自校の実態把握(自己点検・自己評価)を前提に、「我が校の基礎・基本とは何か」とか、教科学習で最低限押さえておくべき指導・育成のポイントを確定し、生徒の学習意識や行動特性を把握しておかなくては、弾力的に運用することはできない。
総合人間力の育成の中で教科学習を深める
自校の教育活動の重点実行項目を今後どのようにするのかは、生徒の実態分析と、それに基づく教師間の意志統一があって初めて可能になるのである。これまでの学力向上への取り組みを見ると、ややもすれば、大学入試学力の育成(「目標追求型」の学習)に偏重する傾向が強かった。しかし、大学入試が学びの動機付けとして機能しにくくなってきており、生徒の「学び」に対するニーズも変化していることを踏まえると、
1. 教科学習―基礎・基本の定着と、発展学習の組み合わせによる学力の定着と向上
2. 特別活動―学校行事やHR活動による豊かな心と行動力の育成
3. 「総合的な学習の時間」の活用による自我の確立や進路展望の構築
を、それぞれ有機的に結び付けた総合人間力の育成を目指す高校が増えていくと思われる。
資料3は「大学・学部選択行動」について、大学生のここ数年間における変化を自我同一性の確立度(IPS尺度)によって検証したものである。このデータによると、ほぼ次の諸点が指摘できる。
(1) 高校生より肯定指数の高いカテゴリーは「I 学習志向」「III モラトリアム志向」「IV 同調志向」で、「V 無目的」は低くなっており、「II 実利志向」はほとんど変わらない。このことから見て、高校生に比べて望ましい方向とそうでない方向に分化することが確認できる。
(2) ここ数年間の変化では、「III モラトリアム志向」「IV 同調志向」が10%前後増加し、目的が曖昧なまま大学進学を果たした生徒が増えていることが注目される。特に経済系は「III」が23%、「IV」が26%と激増している。このあたりに、大学生の「知バナレ」とか、「学びからの脱落(学びに向かう力の後退)」が、「学力低下論」との関連で指摘される背景があると言えよう。
(3) IPS尺度による変化からは「I 学習志向」では、途上・自我型の低落が目立っているが、「III モラトリアム志向」は自我型、また「IV 同調志向」は社会・達成型での肯定指数の伸びが注目される。この現象は一見矛盾するように思われるが、これは将来展望を踏まえて大学進学を考えていないと、目標のある学びを選択動機として選びにくいことを示している。「III モラトリアム志向」「IV 同調志向」は自我の確立と深くかかわっており、社会の中で生きる座標軸がない途上型や社会型の肯定度が高いように思われる。
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