6 国立大のセンター試験5教科7科目実施について
変則型であれば対応は可能だが、理科3科目は難しい
04年度入試からセンター試験を5教科7科目で実施するという国立大学協会の方針は、「カリキュラム上、対応できない」という高校側の意見を大学側が尊重する形で、標準型ではなく変則型(数学を2科目と考え、文系は社会2科目・理科1科目、理系は社会1科目・理科2科目とする5教科7科目)での実施が主流になると思われる。しかし、06年度入試に向けて、医学部の理科3科目実施への要望は根強く、今後、再検討が行われる可能性が高い。これらの動向に対して各校は既に様々な対応策を検討している(資料6)。
センター試験5教科7科目も変則型であれば、何とか工夫を重ねて対応は可能であるとする高校が多い。しかし、標準型では現実として対応が非常に難しく、ましてや理科3科目が実施された場合は、現在予定しているカリキュラムを抜本的に見直さなければ対応不可能とする声が圧倒的であった。特に教師が頭を悩ませているのが、国立大の看護系を志望する生徒を指導する場合である。国立大の看護系には現在、文系からの志望者も少なくない。
しかし、今後、センター試験5教科7科目が実施された場合は、国立大の看護系は理科2科目の変則型5教科7科目を指定してくることが予想される。
その場合は、当然ながら該当の生徒は文理選択において理系コースを選択する必要が生じてくるが、現実的には看護系志望者全員が理系コースで学ぶというのはいろいろと指導する上で不都合が生じることは否めない。校内のコース設定そのものを再考する必要もあるとの意見もある。確かに少数ではあるが、「センター試験が5教科7科目で実施されたとしても、現状の指導で十分対応できる」と回答した高校もある。しかし、ほとんどの学校においては、センター試験5教科7科目実施の対応は大変切実な課題であると言えよう。
高校側は必ずしも改革に否定的なわけではない。フリーアンサーには「センター試験が5教科7科目で実施されることにより、生徒が多くの科目をしっかりと学ぶようになることは好ましい」とする肯定的な意見もかなり多かった。しかし、高大双方の協力による建設的な大学入試改革のためには、
(1)生徒が高校に入学する前までの具体的方針確定
(2)十分な対応準備期間の確保
(3)大学側からの必要な情報の公開
(4)高校現場の実情を踏まえた現実的な改革の提言
などが必要であろう。改革を進めていくカギは、今まで以上に密な高大連携にある。
今回の全国アンケート調査は、非常に回答の戻りが早いのが特徴であった。内容的にも、新課程やセンター試験5教科7科目実施に関して、現場の責任者としての率直な意見が多数寄せられた。この点からも、この1年間の高校現場における新課程に向けた検討の深まりが感じられる。
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