徹底的な個人面談と生徒の意思尊重で 学習意欲を掘り起こす
では、2年間の議論の結果、同校は03年度新課程に向けた課題をどのように捉えているのだろうか。高橋先生は「今後の課題は生徒の学習意欲の掘り起こしにある」と明言する。
「授業時間数が減少する一方、大学入試では今まで以上に幅広い学力が要求されるようになります。この状況の中で生徒の学力を伸ばしていくためには、学習に対するモチベーションを上げていくしかありません。低学年の時は少しのんびりしていた生徒も、明確な学習目的を持つと必ず3年生で大きく学力を伸ばします。現在、03年度に向けて今まで以上に学習意欲の掘り起こしを重視した指導案を構築中です」
同校が生徒の学習意欲の掘り起こしのために考えているのは、次のような取り組みである。
(1)徹底した個人面談
同校の進路指導においては、3年間を通じて生徒との個人面談が最も重視されている。特に3年次ともなると年間10回もの個人面談が実施され、担任と生徒が1対1で、志望進路についてとことん話し合う。
「面談では保護者の希望や日頃の学習状況に至るまで、しっかりと生徒を把握するよう努めています。そして、こうした面談を踏まえた上で、2年次3学期から計5回の『進路検討会』を行います。これは進路部と学年団に加え、校長や部活動の顧問も加わり、生徒一人ひとりの進路を検討するものです。こうしたきめ細かな指導の中で、『なぜ学ぶのか』『何を学ぶのか』といった生徒の目的意識を明確にし、学習へ向かう意欲を喚起してきたのです。本校では『総合学習』を02年度から前倒しで実施しますが、その内容の大きな柱として、まず、この『進路検討会』があります。さらに自分の進路にかかわる『課題研究』といった新しい取り組みとリンクさせることで、今まで以上に効果的な指導が実現できると考えています。その意味で、『総合学習』の導入は指導改革を進める上での大きなチャンスだと考えています」
(2)自ら選び取る機会の提示
3年次の2学期から行われる自由選択方式の補習も、生徒の進路意識を高める取り組みの一つである。
「本校では授業の補習とは別に、生徒が自分の進路に応じて自由に選択して受講できる補習も実施しています。中には苦手な科目を避けようとする生徒もいるので、時には教師の指導が必要な場面もあります。しかし、本当の意味で補習という学習時間を活かすためには、生徒が「自分には何が必要なのか」を自ら判断し、それを選び取ることが大切です。補習もまた、『本当に自分の進みたい進路は何か』ということを、生徒自身が真剣に考えるための機会なのです。03年度に向けては、補習の内容を精選し、一層、教育効果の高いものにしていきます」
同校がこの2年間に重ねてきた検討は、03年度新課程から何を新しく始めるかではなく、これまで積み上げてきた指導ノウハウが改革にどう活かせるのかということであった。
「本校はこの10年間で国立大合格者が倍増し、260名を超えるようになりました。その最大の要因は生徒一人ひとりのモチベーションを引き出し、高めることを考え続けたことだと思っています。新課程においても、教師が生徒と真剣に向き合っていくことの重要性は変わりません」
同校では今後、より充実した生徒指導を行うために、教師同士の相互啓発に一層努めたいと言う。出雲高校の新課程に向けた取り組みの方針は、教育改革の本質を考える上での重要な視座を提供している。
<前ページへ 次ページへ>
|