抗えない国際化の波
近年、急速に進むグローバル化は、特に経済や政治の分野において著しい。インターネットなどの情報ツールの普及で、モノやカネがよりスピーディーに世界を駆け巡るようになり、また、企業の海外進出や多国籍化が進んでいる影響で、国境を越えたヒトの動きも活発化してきている。他方、政治の分野でも環境問題や人口問題など一国では解決できない課題が増えてきている。
キヤノン株式会社の細谷陽一氏は、企業の国際化について次のように語る。
「現在は、国境を越えた大競争時代です。もはや日本だけでビジネスをしている時代ではありません。当社も、国別、地域別のニーズに応えられるように、現地の方と協力しながらビジネスを行っていかないと、生き残れません」
キヤノンでは全社員8万7000人のうち半数以上が日本人以外であり、地域別の売り上げ比率を見ても約70%が海外の国々で占められている(資料1・2)。そのため、海外支店に派遣される社員だけではなく、日本にいる社員も電子メールや電話、文書などで海外と英語でやり取りをする機会が日常化しており、テレビ会議も頻繁に行われていると言う。
「日本にいても、海外の方と英語を使ってコミュニケートしたり、文書のやり取りをしたりすることは日常的になってきていますね」と細谷氏は説明する。
また、国際化は、モノだけではなくサービスを提供する企業でも着々と進んでいるようだ。広告代理店である株式会社博報堂の兼松英樹氏は、同社の海外戦略を次のように説明する。
「当社の海外業務は、主に日本でのお得意先が海外に進出する際のコミュニケーション活動をサポートすることが中心です。どのようなメディアを使って、どんな広告活動を行っていくのかをお得意先と一緒に考えます」
博報堂の場合、クライアントの進出先により、ビジネスを展開する国が違ってくる。そのため、海外に42のオフィスを設け、グローバルマーケティングのノウハウやメディアに関するデータベースを構築している。日本企業の眼が海外に向けられれば向けられるほど、それに合わせて博報堂のビジネスも国際化していくというわけだ。
一方、行政においても国際化は急速に進んでいる。人事院の和田縁氏は、「国際貢献や環境問題など、地球規模の課題が山積みの今日、行政も国際化しないわけにはいきません。海外に出て行くばかりでなく、経済のボーダレス化によって、海外からのヒトの流入も増えています。国際社会の中での日本の立場を今まで以上に意識する必要があると思います」と語る。
実際、国家公務員の採用試験では、今まで以上に外国語に重きを置いたり、国際関係の科目を新設したりするなど、国際的な広い視野を持った人材を採用し始めた。このように、企業や行政では、進む国際化の中で、それにどう対応していくかが求められているのだ。
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