VIEW21 2002.6  リーダー群像
 現状をどう捉え、どう行動したのか

議論で出された様々なアイデアを
市民や企業と共に試そうと……

 従来、横浜市は「ごみの減量リサイクルに対してあまり熱心ではない都市」と考えられていました。私も98年に消費生活総合センターの所長から環境事業局に異動してきた当時は、「資源化できるものがもっとたくさんあるのに、なぜ全部燃やしてしまうのか」と、一横浜市民として強い不満を持っていたほどです。しかし、横浜市のごみ排出量やごみ処理・資源化ルート、それに設備や予算、国内外の環境問題について勉強してみると、意外な結論にたどり着いたのです。それは、「横浜市はごみを減らすために最低限必要なことはできているのではないか」ということでした。
 実際横浜市では、93年より瓶や缶、ペットボトルなどの分別収集も順次行っていましたし、古紙は地域と民間のリサイクル業者が協力して回収しており、市はこれを支援していました。粗大ごみの中の家具類で再生利用が可能なものは、リサイクルプラザに回されていますし、その他のごみも最新設備を備えた6つの工場で安全に処理されています。私が思っている以上に、横浜市には効率的なごみ処理のシステムが存在していました。問題は、市民には「ごみ処理はすべて行政が行うもの」という意識があり、行政にもこれまでは「廃棄物の処理さえきちんと行えばよい」という、受け身の対応に追われてきたことにありました。そこで、私は行政がもっと「ごみを減らそう」というメッセージを市民や企業に向けて発信し、市民や企業もごみの減量化に責任を持って取り組んでもらえるような策を考えようと思いました。
 検討委員会では、ごみ減量化のための活発な議論が行われました。机上の空論で終わってしまわないように、様々なアイデアを市民や企業と共に試していこうと策が練られました。環境に優しい取り組みを商店街ぐるみで行う「エコ商店街モデル事業」、横浜市民からごみ減量化のためのアイデアを募集した「ヨコハマごみ減量・リサイクルアイデア大賞」、市民の興味を喚起するための「ヨコハマごみフォーラム2000」……。市民や企業も一緒になってごみを減らしていくという流れをつくるために、様々な試みを行いました。

写真
(写真上)
石川課長のデスクには、環境問題に関する資料がうずたかく積まれている。

(写真中)
「エコ商店街」のモデルとなった伊勢佐木町商店街。エコチケットの配布など、商店街の方々の積極的な活動がごみの減量化に役立っている。

(写真下)
伊勢佐木町商店街に置かれたペットボトル回収機。学校でごみの減量化について学んだ生徒たちが、両親と共にペットボトルを返しに来ることもあるという。



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