事例3 兵庫県立小野高校の場合
「考える技法」の習得を目指した「総合学習」で 学力向上を図る
「総合学習」の実施を学力向上につなげたいと考える高校は多い。だが、同じ目的を共有しつつも、その具体策の決定に当たってはなかなか教師間の合意が難しい場合も少なくないようだ。確固としたビジョンに基づき、改革を進める小野高校の事例に注目したい。
小野高校では現在、99年度に設置された「将来構想委員会」を中心に、03年度に向けた課題の検討が進められている。そして、02年度より同校では、従来の50分×6コマのカリキュラムを、03年度を見据え、45分×7コマのカリキュラムへと変更した。同委員会の藤原寿夫先生は、取り組みの経緯を次のように振り返る。
「45分授業は、授業時間の減少に対し、反復学習の機会を増やすことによって対処しようという発想で導入しました。しかし、本校では、それを単に知識を詰め込む機会の増加とは捉えていません。むしろ、『これを機に授業の質そのものの向上を図っていくべきではないだろうか』という問題意識から検討がスタートしました」
では、同校では授業の質の向上を具体的にどのような点に求めているのだろうか? 藤原先生はそれを「生徒が自らの頭を使って考えられる授業の構築」と表現する。
「授業時間が短くなったからこそ、生徒に自らの頭を使って考えさせる授業を行うことが大切なのです。02年度から学校週5日制がスタートしましたが、週末の自宅学習を考えた場合にも、自ら考える姿勢を持たない生徒には有効な学習時間とはならないでしょう。そこで、本校では『総合学習』を、『考える力』を育成する時間と位置付け、教科学力の向上と密接にリンクした内容になるよう構築しました」
事実、同校が02年度より導入を開始した「総合学習」は「考える技法」の名を冠する。その内容については資料4に整理したが、3年間を通じて、教科学習の前提となる「考える力」を、生徒が段階的に身に付けられる綿密な指導計画が立てられているのが特徴だ。
「ディベート指導など、従来経験のなかった指導もあるため、教師の指導力に差があるなど、今後も改善を要する課題があるのは事実です。しかし、教師間にしっかりとしたコンセンサスができているので、取り組みの根幹がブレることはないと確信しています」
資料4 小野高校の「総合学習」の概要
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3年 学びを深める 高校の学習の発展として「総合学習」を位置付ける
- 活動内容
●小論文問題研究
…教科で学んだことを実践的に応用し、個性や主張のある小論文の作成を目指す
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2年 学び方を実践する 高校の学習の中核として「総合学習」を位置付ける
- 活動内容
●課題の設定やメンバーの役割分担の決定などグループづくりを実践
●読書やインターネットを活用した情報収集
●研究成果の小発表による情報発信
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1年 学び方を学ぶ 高校の学習の基礎として「総合学習」を位置付ける
- 活動内容
●情報活用能力の育成
●自分の頭で考えるとはどういうことか
●「総合学習」の成果を調査・統計の手法で分析
●文理選択・学部研究を題材に、学問の体系を把握する力を育成
●論文の書き方指導(ディベート、KJ法 etc.)
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兵庫県立小野高校教諭
藤原寿夫
Fujiwara Toshio
教職歴24年目。同校に赴任して14年目。2学年主任。数学担当。「『真面目にごまかさずに努力せい』と日頃から指導しています」
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兵庫県立小野高校教諭
菅野恭介
Sugano Kyosuke
教職歴22年目。同校に赴任して11年目。進路指導部長。数学担当。「生徒にとって良き壁となれるような指導を心掛けたいと思います」
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