学校・生徒の在り方を見据えた 活動内容の決定
1992年度に英語コースを設置、96年度に単位制を導入するなど、先進的な試みを続けている石川県立金沢西高校。同校は、01年度より1年生を対象に「NFT(西高フロンティアタイム)」と銘打った「総合学習」を実施し、02年度は1、2年生を対象に、取り組みのさらなる深化を目指している。00年度の立ち上げ時より、NFTの運営に中心的な役割を果たしてきた中田久実子先生によれば、NFTは全体を通じて「主体性ある生徒の育成」を目指す取り組みになっているという。
「教育環境が激変する中、本校では単位制や二学期制、65分授業に関する運用上の課題も多く、これらの問題について真摯な議論が行われました。そして、その結果たどりついたのが、『新しい時代を生きていく力を、自ら発見・発掘できる生徒を育てなければならない』というテーマでした。単位制の本校が、さらに発展することを考えたとき、生徒が今まで以上に深く自己を認識し、明確な将来像を描けるようになることが大切です。『生徒一人ひとりの成長こそが学校の活性化につながる』という認識の下、『総合学習』の在り方を摸索しました」
こうした問題意識を背景に、同校では具体的な指導プランの策定に取りかかった。その結果、「総合学習」のコアとなるべき活動として浮上してきたのが、同校が従来より実施してきた「キャリア研究」と「国際理解」、そして、「総合学習」の実施に当たって新たに加えられた「自己表現」という三本の柱だった。
「単位制という本校の在り方を考えたとき、明確な進路意識の育成は欠かせません。従来より、カリキュラムガイダンスや職業研究などを通して行ってきたキャリアに関する指導を、今まで以上に充実させることが急務でした。また、英語コースを設置して以来、本校では『国際理解』が学校の大きな特色となってきましたが、必ずしもその取り組みが、他の活動と有機的に結び付いているとは言えませんでした。そこで、『総合学習』の実施を機にその点を見直しました。そして『自己表現』は『キャリア研究』『国際理解』で得られた学習効果を、生徒一人ひとりに還元する取り組みとして新たに立ち上げました。この三つの取り組みがリンクしながら生徒を育てていくことをNFTでは目指しています」
ちなみにNFTという名称は、同校の教職員が度重なる議論の末にたどりついたものだ。そこには「フロンティア」の原義を踏まえ、「自分自身の未開拓な部分に踏み出す」「国境を越えた出会いをつかむ」「学問の最先端に触れる」といった意味が込められているという。NFTの実施により、同校の取り組みの内容はどう深まったのか? 以下、「国際理解」を軸に概観してみよう。
国際交流を実際に体験し、 異文化理解とは何かを心と体で感じる
同校の「国際理解」は、6月中旬の「異文化理解入門」と、11月中旬の「国際理解ワークショップ」という二つの取り組みから成り立っている。前者はさらに、「国際理解講演会」と「海外語学研修報告会」から構成されており、これらが相乗効果を生みながら生徒を触発するよう留意されている。昨年度、「海外語学研修報告会」の運営に中心的な役割を果たした杉本憲子先生によれば、一連の取り組みは、NFTの実施に合わせて、従来の取り組みを大きく見直した結果生まれたものだという。
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