VIEW21 2002.6  特集 魅力ある学校づくりにどう取り組むか?

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入学者選抜の工夫

 中高一貫制導入に向けてまず同校で議論の俎上に上ったのは、「学力検査を課さずに中等部の生徒の学力を把握することはできるのか」「入学者の学力が低下するのではないか」という問題であった。進路指導主事の竹山喜章先生は、その点が議論になった背景について、次のように説明する。  「内進生については高校入学時の学力検査がありませんから、必然的に中学校の入学者選抜が重要になります。特に本校の場合、内進率が80パーセントにも達しますから、その点は軽視できない大きな課題だったのです」
 しかし、公立中学校の入学者選抜に学力検査を課すことは、原則的に禁じられている。そこで、同校の02年度入学者選抜においては、学力検査によらない「総合適性検査」を用いて入学者の選抜が行われた(資料1)。
 問題は数名の人物が会話する形式で進行する。情報理解力、数理的思考力や発想力などを問えるよう工夫されており、例えば、遠足に出かけるシーンでは、「クラスの生徒数は37人」という条件で、「1つのグループの人数は6人まで、各グループの人数の差は1人まで、グループの数は全部で10まで」という会話に従ってグループのつくり方をすべて答えなければならない。
 また、作文問題においても「地球について何も知らない宇宙人に、地球のことをどう説明するか」など、発想力や文章表現力を問うユニークな設問が用意されている。つまり、小学校の授業で培った力を、与えられた条件の中で柔軟に使いこなす能力が求められる問題なのである。
 「今回の『総合適性検査』によって、物事を順序を追って理解する力や、それを文章で表現する力などが把握できたのではないかと思います。『いろいろな体験をしている生徒』『新たな挑戦に意欲を持っている生徒』など、本校が生徒に望む資質をきちんと判断できるような問題になっているのではないでしょうか」(竹山先生)
 「教育関係者やマスコミからも、概ね高い評価が寄せられました。また、採点に当たった本校の教師の中からも、『しっかりと生徒の思考力や表現力を問う問題になっているのではないか』という感想が多く聞かれました。結果として、小学校の指導に好影響を与えるような問題だったのではないかと思っています」(永田先生)

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