VIEW21 2002.6  特集 魅力ある学校づくりにどう取り組むか?

「総合学習」を通じた進路意識の涵養

 中高接続を図る同校のもう一つの試みとして『未来航路プロジェクト』と呼ばれる6年間を通じた「総合学習」の実施が挙げられる。職業・学問研究などを通じて進路観を育成する活動をメインにしているが、大塚先生は、中高一貫校における「総合学習」の意義は大きいと指摘する。
 「『総合学習』により進路意識を明確化することは、高校入試がないことによって発生する『中だるみ』を防止する意味でも重要なことなのです。しっかりとした進路意識に基づき主体的に科目選択し、学んでいく姿勢を身に付けさせられるかどうかが、本校の中高一貫教育の成否の鍵を握っていると言えるのです。そこで、『総合学習』以外のシーンでも、進路相談に応じるキャリアアドバイザーの配置や、進路に関する資料や情報を置くガイダンスルームを開設するなどして、生徒の進路意識を高めていく予定です。学ぶ意欲を6年間どう持続させるかは、中高一貫校に課された大きな課題です」

異年齢交流による人間的成長も期待

 中高一貫制は、生徒の人間的な成長にも大きな効果が期待される。
 「年齢の異なる生徒が接触することは、互いに大きな刺激を与えます。高校生のしっかりとした進路意識や学習意欲に触れることは、中学生にとっての良いロールモデルとなり、学習に対するモチベーションを高めていく上でも重要な意味を持つはずです」
 実際、同校では中学生の歓迎会を高校生が企画、実施したが、中学生はブラスバンド部の演奏のレベルの高さに驚き、非常に感動していたそうだ。また、昼休みには中庭でお弁当を食べながら中学生と高校生が話をする光景も見られるという。
 「今後も生徒会が主催する学校行事を中学と高校の合同実施にしたり、部活動でも連携していきたいと思っています。また、高校生に中学生の教室で講演をしてもらうなどの取り組みも考えています」
 また、同校では中学3クラスに対し、高校8クラスと高校からの入学生の割合がかなり高いが、大塚先生はこの点も、生徒の人間的成長に生かしたいと考えている。
 「高校では、内進生と外進生は混合クラスにする予定です。個性の違う集団が刺激し合うことで得られる教育的効果を期待しています」
 大塚先生は、一連の取り組みの成否が決まるのは、卒業生が出る6年後だと考えている。  「卒業生の一人ひとりが、自分の進路希望を実現できてこそ、本校の取り組みが成功したと言えるでしょう」

 「今後も考えるべき課題は山積している」としつつも、「中高の教師が話し合い、課題を解決していくのは楽しみ」と笑う大塚先生。そのスタンスはあくまでも前向きだ。

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